借地権は強くて価値のある権利ですがそれだけに色々あります
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内藤寿彦法律事務所
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弁護士内藤寿彦
 (東京弁護士会所属)
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2012/08/01
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借地の法律の基礎知識

古い法律と新しい法律、どちらが適用される借地でしょうか
旧借地法が適用される借地の存続期間と更新
堅固建物と非堅固建物
借地借家法(新しい法律)が適用される借地の存続期間と更新
更新が原則
借地上の建物の登記名義には注意しましょう
 ~地主が変わった時に困ることになります
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古い法律と新しい法律、どちらが適用される借地でしょうか
~借地借家法という法律がありますが、廃止された借地法が適用される場合もあります。

 借地については、「借地借家法」という法律があります。
 この法律は、名前のとおり、借地と借家についての法律ですが、全ての借地を対象とするものではありません。建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約(借地契約)を対象としています。
 建物所有を目的としない借地、例えば、仕材置き場や駐車場のための借地には適用されません。また、賃料を払わないでただで借りている場合(使用貸借契約)にも適用されません。
 これから「借地」という場合、特に断らない限り、建物所有を目的とする土地の賃貸借だと思ってください。

 さて、借地について、以前は「借地法」という法律がありました。この法律と、借家についての「借家法」という法律を合わせ、中身も変えて、現在の「借地借家法」という法律が作られました。
 そして、古い借地法も借家法も廃止されました。
 ところが、古くからの借地の場合、存続期間や更新期間については廃止された「借地法」が適用されます。
 つまり、古くからの借地は、昔ながらの権利が維持されています。

 どんな借地に旧借地法が適用されるのかと言うと、それは「平成4年7月31日」以前に設定された借地です。
 「設定された」というのは、初めて借地の契約を結んだことを言います。 昔からの借地の場合、何度か更新を繰り返していますが、平成4年8月1日以降に更新したとしても、最初に借地の契約を結んだのが、平成4年7月31日以前なら存続期間などについて旧借地法が適用されます。(*)

(*)借地の設定後、更新したり、相続があったり、建物の再築をしたり、第三者に譲渡したりします。その時に契約書を作り直すことが多いのですが、その契約書に、以前から借地権があってそれが継続していることが書いていない場合があります。つまり、その契約書だけ見ると、その契約書の日付けに新しく借地の契約をしたように見える場合があります。 それでも旧借地法が適用されますが、第三者に譲渡する場合や将来のトラブル防止のために、以前の契約書など古くから続く借地権だという証拠はきちんと残しておく必要があります。

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●旧借地法が適用される借地の存続期間と更新

 平成4年7月31日以前に設定された借地については、その存続期間や更新期間は廃止された借地法(旧借地法)が適用されます。
 借地法では、契約で借地上に建てられる建物が堅固な建物(ビルなど)か堅固でない建物(木造建物など)かで、契約期間が違います。(*1)

 契約で期間を決めていない場合には、法律で借地の存続期間が決まります。その期間は、堅固な建物を建てる場合には60年、非堅固な建物を建てる場合には30年です。ただし、この期間内でも、建物が古くなって壊れてしまった場合(法律は「朽廃」と言っています)、借地契約は終了することになっています。

 契約で期間を決めた場合でも、法律で最短期間が強制されています。堅固な建物を建てる場合には契約期間は30年以上、非堅固な建物を建てる場合には20年以上です。この場合は、建物が朽廃しても、借地契約は終了しません(期間の満了まで続きます。最高裁昭和37.7.19判決)。
 これよりも短い期間を定めた場合、その期間の定めは無効です。その結果、契約期間を定めなかったことになります。つまり、60年(堅固建物)か30年(非堅固建物)になります(期間中に建物が朽廃すれば契約は終了します)。

 次に、更新した場合の期間ですが、これについては、堅固建物は30年。非堅固建物は20年です。この場合も、期間の途中で建物が朽廃した場合はその時点で契約が終了します。
 しかし、更新の際に契約で、堅固建物30年以上、非堅固建物20年以上の期間を定めてあれば、期間途中で建物が朽廃しても契約は終了しません。(*2)(*3)
 更新を何回繰り返しても、法律でこの期間が短縮されることはありません(この点が新法とは違います)。
更新料については、「借地の更新と更新料」をご覧ください。

(*1)堅固建物と非堅固建物の違いなどについては、次の「堅固建物と非堅固建物」をご覧ください。

(*2)旧借地法5条2項の条文だけ読むと、堅固建物30年、非堅固建物20年「よりも長い期間」を定めないと建物の朽廃で借地権が消滅するように読めます。しかし、「堅固建物30年以上、非堅固建物20年以上」の期間を定めた場合には、朽廃で消滅しないというのが判例です(東京高裁昭和44.12.19判決)。

(*3)この場合、契約期間満了まで借地権が続くとは言え、契約期間満了の時に借地の上に建物が建っていない場合は、契約の更新はできません(旧借地法4条)。ただし、建物が建っていない理由について、地主に責任がある場合には、更新できるとした最高裁の裁判例があります(最高裁昭和52.3.15。事案は、火災によって建物が焼失した後に再築しようとしたところ、地主が建物明け渡し調停を起こして再築できない状態になり、期間満了したというもの)。

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●堅固建物と非堅固建物
・堅固建物と非堅固建物の違いが問題になるのは古い借地権だけです
 廃止された借地法が作られた当時(大正10年です)は、石造り、土蔵、レンガの建物と木造建物では、建物の寿命に大きな違いがありました。
 しかし、様々な工法が開発されると、木造建物でも、耐久性、耐震性で、鉄骨建物と大差のないものができてきました。そのため、堅固建物、非堅固建物の区別ができない、ということで、「借地借家法」では、この区別がなくなりました。
 ところが、古くからの借地法が適用される場合、未だに、堅固、非堅固の区別が問題になります。契約で、特に堅固建物が建てられることになっていない場合は、非堅固建物しか建てられません(旧借地法3条)。
 このため、古い木造建物を取り壊して、新しい建物を建てる場合に、新しい建物は非堅固建物にあたるんだろうか、という問題が起こります。非堅固建物しか建てられない借地に、堅固建物を建ててしまうと契約を解除されるおそれがあります。(*)

(*)通常は、増改築禁止特約がついているので、地主に無断で、古い建物を取り壊して新しい建物を建てれば、それだけで契約解除の理由になります。問題なのは、改築について地主の承諾を取ったのに、堅固建物を建てた場合です。珍しいケースでは、裁判所に地主の承諾に代わる許可の申立をした時に、設計図面では堅固建物(重量鉄骨建物)なのに、借地権者の代理人弁護士も、地主側の代理人も、裁判所も気づかないで、改築の許可の決定を出してしまい、建築途中で、堅固建物だと分かって、地主が契約の解除を求めた例があります。このケースでは、堅固建物と分かった時点ですぐに工事を中止するなどしたため、契約違反行為だけれども、解除までは認めないという結論になりました(東京地裁平成14.3.18判決)。なお、通常は、改築の許可を求める時に、増築予定の建物が堅固建物だと裁判所が判断すれば、裁判所は許可しません(後でお話する条件変更が必要になります)。

・堅固建物と非堅固建物の区別
 基本的には、耐久性、耐震性、解体の容易性の有無などを考慮して決まるなどと言われていますが、木造建物でも、耐久性、耐震性、耐火性に優れたものが建てられています。
 それでも、法律上は、堅固建物、非堅固建物の区別があります。どちらかはっきりしている場合、例えば、木造建物は非堅固建物、鉄筋鉄骨コンクリート造の建物は堅固建物ですから、区別するのに困ることはありません。
 問題になるのは、軽量鉄骨の建物と重量鉄骨の建物です。軽量鉄骨で解体容易なものは、非堅固建物だという裁判例が多数あります。
 重量鉄骨でも、軽量鉄骨とほとんど変わらない場合があります。しかし、古い最高裁の判決(昭和48年10月 5日)では、重量鉄骨建物は原則、堅固建物だということを前提として、組み立て式のため解体容易で、重量鉄骨の柱の途中が木材で繋がれているというかなり特殊な場合に、非堅固建物と認めました。現在の技術から見ると相当古い時期の裁判例になりますが、以後、これに関する最高裁の判決はないので、現時点でも、これが最高裁の判例になっています。つまり、原則として、重量鉄骨建物は堅固建物と判断される可能性が高いということです。

・裁判所で借地条件を変更してもらうことが可能です
 堅固建物所有目的か、非堅固建物所有目的かは、借地の条件ですから、地主との合意で変更することができます。
 地主が承諾しなければ、裁判所の決定で、契約を堅固建物を目的とするものに変更してもらうことができます(借地権者側に必要性がなければなりません)。この場合も承諾料の支払いが必要になります(更地価格の1割が相場とされています)。同時に地代なども変更されることがあります(借地権者にとって利便性が増すからです)。なお、契約期間が30年に変更されます。以前は許可の決定の時から契約期間を30年にするという裁判をしていましたが、現在の東京地裁ではそのような裁判はしない扱いに変わったとのことです。このため、もとの期間(20年)の満了時に更新し、更新後の期間が30年になります。

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●借地借家法(新しい法律)が適用される借地の存続期間と更新

 平成4年8月1日というのは、新法(借地借家法)が施行された日です。この日以降に設定された借地については、新法(借地借家法)が適用されます。

 その存続期間ですが、定期借地ではない一般の借地の場合、契約を結んだ最初の期間は30年になります。それよりも長い期間を決めた場合はその期間になります。30年よりも短い期間を決めた場合、その合意は無効になり、期間は30年になります。
 廃止された借地借家法と違って、堅固建物か非堅固建物かで期間に違いはありません。

 特に旧借地法と違うのは、更新した後の期間です。新法では、最初の更新後の期間は20年(それよりも長い期間を決めた場合はその期間)ですが、その次の更新では10年になります(これよりも長い期間を決めた場合にはその期間)。その後は何回更新を繰り返しても10年です。

 なお、新法では、建物の朽廃による契約の終了という規定はありません。建物がなくなっても契約期間満了まで契約は続きます。ただし、建物がなけば、期間満了後の更新が認められません。

 新法(借地借家法)では、一般の借地以外に「定期借地」というものを認めました。一般の借地では更新が原則ですが、「定期借地」の契約をしておけば期間満了で契約は終了します(更新はしません)。その契約期間は50年以上でなければなりません。また、事業用の建物の所有を目的とするものなら、50年未満の期間の定期借地契約を結ぶことができます。その場合は、公正証書で契約する必要があります。(*)
(*)50年未満の期間の事業用定期借地は、30年以上50年未満のものと、10年以上30年未満のものの2種類ありますが、いずれも公正証書で契約する必要があります。50年以上の定期借地の場合は、書面で契約する必要がありますが、公正証書でなくても有効です。


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●更新が原則

 どういう場合に更新するのか、という点については、旧借地法も新法(借地借家法)でも同じです(新法の定期借地は更新しないので、これは除きます)。

 期間満了前に、借地権者と地主が更新の合意をした場合は当然ですが、その他、借地権者が更新したいと請求した場合や、期間満了後も借権者が土地の使用を続けている場合に更新します。
 地主は、更新の拒否ができますが、借地上に建物がある場合には、正当事由がなければなりません(*1)。ただし、借地の場合、地主の正当事由が認められる可能性はかなり低いと言えます(*2)
 実際に古くからの借地権は、20年ごとの更新を繰り返して延々と続いています。借地権が終了するのは、借地権者が底地を買い取ったり、逆に底地の権利を持つ者が借地権を買い取ったりする場合が多いように思います。

 合意更新の場合には、更新料が支払われるのが普通です。ただし、更新料をいくらにするのかでトラブルになることがあります。建物の賃貸借のように2年、3年で更新するなら契約の時に一定額の更新料を決めておくことができますが、20年単位で更新する借地の場合は予め決めておく契約で決めておくことは困難だからです。

(*1)旧借地法では、更新の時に建物がない場合には、地主は更新に対し異議を述べることができ、その場合、正当事由は必要ありません(つまり、期間満了で借地権は終了します)。無論、地主が異議を述べなければ、借地は更新することになります。また、地主と合意更新することもできます。

(*2)地主が複数の土地を所有しているケースが多く、そのため、1つの借地について、地主に使用の必要性あるとは言えないことが多いと言えます。しかし、地主が所有している土地が、その借地しかない場合には、地主に使用の必要性が認められる(正当事由が認められる)可能性があります。
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借地上の建物の登記名義には注意しましょう

 借地法や借地借家法が適用されるのは、建物の所有を目的とした借地権です。借地権は、土地の賃貸人と賃借人との契約によって発生します。
 契約後に土地の所有者が変わることがあります。ただし、相続で地主が替わる場合には、亡くなった地主の契約関係も相続され、そのままの状態で契約が続くので、借地権者にとって問題はありません。問題は、第三者が土地を買い取った場合です(公売や競売で買い取った場合も含みます)

「自分が新しく土地の所有者になった。だから、土地から出て行け」という通知が来たと、相談に来られる借地権者の方がいます。しかし、土地の所有者が変わったからと言って借地権が否定されたのでは、土地の上に建物を建てて生活の基盤にしている借地権者の権利が不安定になります。
 法律では、借地の上の建物が「借地権者の名義」で登記してあれば、新しい土地の所有者に借地権を対抗できることになっています(ただし、建物の登記は、新しい土地の所有者が、土地の名義変更の登記をする前にしなければなりません) 。この場合、新しい土地の所有者は借地権者を追い出すことはできません。新しい土地の所有者が土地の賃貸人(地主)になって契約が続くことになります。

 ただし、逆に言えば、建物の登記をしていない場合や建物の登記が借地権者の名義になっていない場合には、権利が否定されてしまいます。
 この場合でも、新しい土地の所有者が、借地権を認めてくれれば問題はありませんが、そうでなければ、建物を取り壊して土地を明け渡さなければなりません。(*1)

 建物名義が借地権者の名義と違っている例として、ありがちなのは、借地権者が亡くなったのに死後もその人の名義のままになっている場合です。遺産分割でもめて登記名義の変更ができないこともあると思います。ただし、亡くなった人が借地権者で建物の名義人だった場合には、亡くなった人の名義のままでも相続人は、新しい地主に借地権を対抗できるというのが判例です(大審院昭和15.1.11、最高裁昭和50.2.13。なお、相続一般については、「弁護士による相続の法律相談」、借地の相続については、「借地権の相続」をご覧ください)。

 しかし、原則として建物の名義人が借地権者でなかった場合には、対抗できないというのが判例です。
 借地権者が養母の名義で建物の登記をした場合、養母が亡くなって借地権者が養母の権利を相続したとしても、借地権を対抗できないという裁判例があります(最高裁昭和58.4.14)。
 また、子ども名義でもだめだというのが判例です(最高裁昭和50.11.28)。古い裁判例で批判もありますが、現時点ではこれが判例です。建物を建て替える時に子どもの名義で建物の登記をしたりすると面倒なことになります。(*2)

 建物を譲渡担保のために債権者名義にした場合も、地主が変わると借地権の対抗ができなくなるという判例もあります(最高裁平成元.2.7)。

 建物の登記名義は、借地権者の名義にする。このことは十分に注意しなければなりません。

(*1)例外的に、新しい土地の所有者に対抗できる場合もあります。弁護士に相談する価値はあります。

(*2)名義だけでなく、実際に子どもが建物の所有者になる場合には、借地権の無断譲渡の問題が起こります。地主の承諾がないと解除されるおそれがあります(承諾料も、第三者に譲渡する場合よりは安くなりますが、それでも支払う必要があります)。また、借地権の贈与ということで贈与税がかかります。これらについては、「借地権の譲渡・抵当権の設定」「建物を建て替えて子どもの名義にしたい」をご覧ください。


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