借地権は強くて価値のある権利ですがそれだけに色々あります
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弁護士内藤寿彦
 (東京弁護士会所属)
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2012/08/01
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更新と更新料

借地の期間満了と更新
調停で更新した場合、期間の始まりはいつから?
更新料の支払い義務はあるのか?
更新料の相場と金額
建物賃貸借契約の更新料についての裁判例の影響は?

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●借地の期間満了と更新

 「借地の基礎知識」でお話したように、建物所有を目的とする借地は、平成4年7月31日以前に設定された借地とその翌日以降に設定された借地で、期間が違います。
 ただし、平成4年8月1日以降に設定された借地について、更新が問題になるのは早くても平成34年8月1日です。今からそんな借地について、更新のお話をしてもあまり意味がないので(期間などについては「借地の基礎知識」の「旧借地法が適用される借地の存続期間と更新」をご覧ください)、ここでは、平成4年7月31日以前に設定された借地についてお話します
 これらの借地の期間や更新については、旧「借地法」が適用されます。

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●調停で更新した場合、期間の始まりはいつから?

 今から20年以上前の話になりますが、借地の更新を巡る調停申立が多数起きていました。土地の値段が高くなっていました。それなのに地代はかなり低い値段です。地主としては期間満了の機会に土地を返してもらうか、それなりの更新料をもらわないと割に合いません。
 とは言え、土地を返してもらうためには正当事由が必要です。特に借地の場合、正当事由はなかなか認められません。多くの場合は、それなりの更新料を払うことで更新するという内容の調停が成立しました(中には、今では考えられないくらいの多額の立ち退き料をもらって立ち退いたケースもあります)。
 ところで、この種の調停は通常、期間が満了になった後で地主が申立をします。期間満了後の更新を拒絶し、それによって借地契約は終了したから立ち退いてくださいということで調停申立をします。そして、1年近い時間をかけて、最後には、借地権者が更新料を支払って契約を続けるという調停が成立します(調停が成立しない場合もありましたが)。そうすると、次の20年の期間は、いつから始まることになるのでしょうか。

 答えは、期間満了の時からです。理屈はともかくとして、借地契約は途切れないで継続していたという建前です。(*)
(*)契約や調停で、時期をずらすことは可能です。例えば、期間満了から1年後に合意が成立して、その合意の日から20年とすることは可能です。これは、期間満了の日から数えると、21年間の借地の合意をしたことになります。なお、このように20年よりも長い期間の合意更新をしても、その期間が満了して法定更新する場合には更新後の借地の期間は20年になります。
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●更新料の支払い義務はあるのか?

 契約で更新料を支払うことになっていなければ、更新料の支払い義務はありません。これが結論です。
 借地契約というものは相当昔からあったのですが、更新料の支払いは、「昭和30年代になって東京都内の中心地から発生したものらしい」とものの本に書いてあります。そこから、広がったようですが、古い契約書を見ても、更新料の支払いについて何も書いてないのが通常です。
 では、何で借地権者は更新料を支払ったのかと言えば、現在でも名残がありますが、借地契約の当事者には、「地主さんから土地を貸してもらっている」という意識があります。また、期間満了で借地権を失うのは、借地権者にとって大変なことなので、トラブルを避けたいという意識もあったと思います。そういうことで、更新料の支払いが広まったのかと思います。
 それでも、裁判所は更新料支払いの慣習はない、と言っています。従って、契約書に書いてなければ、更新料の支払い義務はありません。過去に更新料の支払いをしたとしても、それは、その更新の時に、更新料を支払う約束をして合意更新をしただけで、次の更新の時にも更新料を支払う約束をしたわけではない、と判断されます。更新料の支払いをして合意更新して、契約書を書き直しても、次回の更新の時に更新料を支払うとは書いてない契約書がほとんどです。
 それでも、相場程度の更新料だったら支払うつもりの借地権者が多いようです。ところが、地主が代替わりしたり、管理している不動産会社が変わった後で、過去の更新の時と比較して高額な更新料を地主側が要求したりすると、トラブルになることが多いようです。行き着く先は、法定更新して更新料も取れない、というケースです。もともとそれが原則ですし、更新料を支払ったからと言って法的なメリットは、特殊なケースを除いてありません(例えば、更新後に増改築をする場合に承諾料を払わなくてもいいということにはなりません)。更新料の性質については色々言われていますが、契約書に書いてない場合には、おつきあい料というのが一番実態に近いと思います。

 更新料の支払い義務がない場合には、更新料を支払わないからと言って、更新できないということはありません。しかし、別の理由で更新できるかどうかトラブルになり(地主側で自分で土地を使う必要があるから土地を返せと主張する場合など)、和解金の意味で更新料を支払って合意更新する場合もあります。地権者の更新請求や借地権者が期間満了後に土地を使用する場合、地主が異議を述べ、その異議に正当事由があれば、借地権は消滅します。しかし、この正当事由はなかなか認められません。それでも、土地の明け渡しを求める調停の申立などをすると、裁判所が、借地権の消滅までは認められないが、更新料を支払って合意更新して円満に契約関係を継続したらどうかと勧める場合があります。

 ところが、法定更新してしまった後になって、更新料だけ支払えと言っても、借地権者が「払わない」と言えば、どうしようもありません(あくまでも契約で更新料を支払うことになっていない場合の話です)。

 ただし、契約期間が経過しても、すぐに法定更新が確定する、ということにはなりません。期間が経過して相当な時間が経った後でも、「法定更新していない、土地を明け渡せ」という裁判を起こすことも可能です。法律では期間満了後の使用に対して、「遅滞なく」異議を述べなければなりませんが、「遅滞なく」もある程度緩やかに解釈されているからです。それでも、「正当事由」が必要になりますが、円満解決を勧められて、更新料を支払って合意更新するという合意をすることもあります。

  なお、更新料を支払う合意があったとしても、法定更新の場合にも更新料の支払い義務があるのかどうかは別問題です。
 勿論、契約書に法定更新の場合にも更新料を支払うと書いてあれば、更新料の支払い義務があります。
 法定更新の場合にも更新料を支払うと明確に書いてないけれども、「更新の場合には更新料を払う」と書いてある場合は微妙です。
 契約書の内容が「期間満了時に建物が存在するときは、賃借人と賃貸人が協議のうえ更新することができる。契約が更新されたときは、賃借人は賃貸人に対して相場による更新料を支払わなければならない」となっていた事案について、裁判所は「この条項は合意更新の場合にのみ更新料を支払うことを約束したもので、法定更新には適用されない」とした例があります。ただし、似たような条項で、法定更新の場合にも更新料の支払い義務があるとした裁判例もあります。

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●更新料の相場と金額

 借地の場合、次の更新まで20年もあるので、最初の契約や更新の時に、次の更新の時の更新料の金額を具体的に決めることは難しい話です。
 そのため、契約書で更新料を支払うことになっていても、算定方法が書いてなかったり、せいぜい「その時の相場」とか「近所慣習その時の相場にしたがって協議の上決定する」などという記載になっている例が多いと思います。
 更新料の相場については、東京都内の場合、更地価格の2~3%と言われています(堅固建物所有の期間30年の借地もこの中に含まれます)。これを単純に、借地権価格の何%になるのか計算すると、借地権割合が7割の地域では、借地権価格の3~4%、借地権割合が6割の地域では、借地権価格の3~5%になります。

 ただし、更新料の金額は、契約で決めてあるという建前になっています。別のところでお話しますが、増改築や借地権の譲渡についての地主の承諾料は、ある程度相場で決まります。これについては、地主の承諾に代えて裁判所が許可をする制度があり、地主と借地権者の利害を調整して裁判所が承諾料を決めていて、これが相場になっています。しかし、更新料は相場で決めるものではありません(契約書で、相場で決めるとなっていれば、相場で決めることになりますが、その場合も、契約でそうなっているから、相場で決めるのです)。

 更新料の金額は契約で決めてある、と言っても、現実に、契約書に算定方法が書いてなければ、初めて契約した時や前回更新したときにどうするつもりだったのか、ということを検討することになります。
 前回更新して更新料を払っている場合は、どうしてその時にその金額に決めたのかが有力な材料になります。
 ただし、20年や30年も前の話ですから、「前回の更新の交渉をしたのはおじいちゃんだったけど、もう亡くなっている」ということで、当事者から話が聞けない場合もあります。
 それでも、当時の更地の価格と更新料の金額が分かれば、多分、こんな風に計算したのではないか、ということがある程度、分かります。無論、前回の更新料も、交渉で決めたことですから(地主が一方的に算定してそれを支払ったということもありますが)、最後は、高過ぎる、安過ぎると言い合って、折り合うところで決めたのかも知れません。それでも、当時の更地価格や借地価格の何%というのがある程度は分かるので、次の更新(今回の更新ですが)も同じように決めることにしていたのではないか、ということになります。

 なお、「前回の更新の時には、相場よりも随分安くしたのだから、今回は高くするべきだ」と主張する地主もいます。しかし、契約書にそのように書いてあるなら話は別ですが、「前回、安い更新料で更新したのだから、今回も同じようにすることにしていたと考えられる」というのが、普通の考え方です。ついでに言うと、「地代を安くしていたのだから、更新料は高くするべきだ」というのも気持ちは分からないではないですが、契約書に書いていない限り、「地代の増額理由があるなら地代を上げればよい。更新料は別」というのが普通ではないかと思います。

 また、前回の更新の時には、増改築の承諾料と一緒に更新料を支払ったが、今回は更新だけ、というようなケースもあります。前回の時に承諾料はいくら、更新料はいくらと決めていれば話は別ですが、通常は、大雑把に両方合わせていくらと決めることが多いのではないかと思います。このため、前回の金額を参考にして今回の更新料を決めるのは難しくなります。

 また、今回が初めての更新というケースでは、手がかりがありません。

 結局、分からない場合には、その時の相場で決めることにしていたのではないか、ということで 落ち着くのがほとんどではないかと思います。
 ただし、相場と言っても、幅があります。地域や、借地上の建物が堅固建物か非堅固建物かで違いがあります(堅固建物所有の借地は期間が30年になります)。建物そのものの状態や、建物の利用状況も考慮される材料になります。1%の違いでもそれなりの金額になるのでなかなか譲れません。また、更地価格自体、どうやって決めるのか問題になります(地主は高めに、借地権者は低めに算定したいと思います)。

 そして、また、20年ないし30年経つと、更新料の問題が起こります。その時にトラブルにならないようにしたいと思えば、その時の算定方法を決めておけばいいことになります。しかし、例えば、「その時の更地価格の何%」と決めることが、実際に20年、30年経った時に、本当にそれでよかったのか、分かりません。また、今現在、更新料の算定で揉めているのに、20年先のことを今決めようとして揉めて、せっかく合意ができたと思っていた現在の更新料の話も降り出しに戻るかも知れません。悩ましい話です。
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●建物賃貸借契約の更新料についての裁判例の影響は?

 建物賃貸借契約について更新料支払い条項の有効性が争われていました。消費者契約法に反するのではないか、ということが問題でした。そして、最高裁判所は、平成23年7月15日の判決で「金額が一義的に明白に定められていれば、不当に高額でない限り、消費者契約法に反しないから有効」としました。要するに、金額がすぐに分かるような形で明らかになっていて、不当に高くなければ有効というのです。
 問題は、借地の更新料の場合にも同じ理屈なのか、ということです。
 しかし、消費者契約法は、平成13年4月1日以降に契約締結されたものについて適用され、これ以前に締結された契約には適用されません。
 つまり、今ここで問題にしている平成4年7月31日以前に成立した借地契約(古い借地契約)には、消費者契約法は適用されません。
 無論、平成13年4月1日以降に成立した借地契約というものもあろうかと思います。そのような借地について更新料の問題が起こるのは平成43年以降になります。
 建物の賃貸借の場合は契約期間が2年や3年ですから更新料の金額を「1か月分の賃料相当額」などというように「一義的に明白」に契約書に記載することができます。しかし、30年後の更新料の金額を「一義的に明白」にするのはかなり難しいのではないかと思います。
 ただし、最近設定される一般の借地契約は、昔の借地のように地代が安くて更新の時に更新料をもらって調整する、という必要はあまりないのではないかと思います。最近設定される借地権で地代が安いというのは、土地の所有者の経営する会社が借地権者になるなど、関係性の強い当事者間で結ばれるような場合ではないかと思います。これらの場合、更新料を取るつもりがないことが多いと思います。
 なお、消費者契約法は、事業者と消費者との契約に適用されます。借地権者が事業者で、借地上の建物を事業用に使用している場合には適用されません。

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