借地権は強くて価値のある権利ですがそれだけに色々あります
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内藤寿彦法律事務所
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弁護士内藤寿彦
 (東京弁護士会所属)
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一般に増改築禁止の特約がついています
禁止される増改築とは
改築に当たるかどうかは微妙な場合があります
裁判所が承諾に代わる裁判をします

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●一般に増改築禁止の特約がついています

 昭和20年代に設定された借地権の中には、契約書を作成していなかったり、作成したかどうか分からないというものがありました。借地権の設定自体がなし崩し的に行われたような場合もあったようです。混乱した時代背景があったということです。
 そうした特殊の例を除くと、借地権の設定の際に土地賃貸借契約書を交わします。そして、そこには「増改築禁止特約」の条項があるのが普通です。 内容は「土地の賃借人が借地上の建物に増改築をする場合には、予め賃貸人(土地所有者)の承諾を求めなければならない」というものです。
 このような条項がなければ、契約期間内であれば借地上の建物を増改築することができます(新法が適用される平成4年8月1日以降に設定された借地権が更新した場合、建物の再築について制限があります。ただし、早くても平成34年以降の問題なのでここでは説明を省略します)。(*)
 しかし、この特約がある場合には、無断で建物の増改築をすると契約違反になり、場合によっては(信頼関係が破壊されたと見られる場合には)契約を解除されることがあります。

(*)旧借地法が適用される「古い借地権」で増改築禁止特約がない場合ですが、まず、借地契約で期間を定めなかった場合には、建物が朽廃(古くなって建物として使い物にならないくらい壊れること)すると、借地権が消滅することになっています(期間と「朽廃」の関係については、「借地の基礎」の「旧借地法が適用される借地の存続期間と更新」をご覧ください)。このため、増改築禁止特約がない場合でも、増改築や大修繕をして、通常、建物が朽廃するはずの期間が過ぎても建物が朽廃しない場合、朽廃するはずの時期に借地権は消滅する、とした裁判例があります。ただし、工事の前に相当程度、建物が古くなっていたことや、増改築の時に地主が反対を表明したなどの事情が考慮されています。
 これに対し、期間を定めている場合には朽廃で借地権が消滅することはないので、上記のような問題は起こりません。しかし、期間満了前に、建物を取り壊して期間満了後も壊れないような建物を建てた場合、地主が異議を述べると、期間満了後の更新の際に不利な事情になります(更新料の額の他、地主の更新拒絶に正当事由があるとされる場合もあり得ます)。これに対し、地主が異議を述べなかった場合には、木造などの非堅固建物の場合には、前の建物を取り壊した時から20年の期間の借地契約になります(旧借地法7条に規程があります。これも一種の法定更新です)。
 なお、単に増改築禁止特約がないだけでなく、「期間中いつでも建物の建て替えができる」という条項があった場合、建て替えに対して地主が異議を述べても、借地権者が更新時に不利益な扱いを受けることはありません。

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●禁止される増改築とは

 長年に渡って建物を使用すれば、建物のどこかを修理しなければならなくなります。このような「修理」と言えるようなものは、「増改築」ではありません。増改築禁止特約があっても、修理するのに一々、地主の承諾を求める必要はありません(ただし、修理と言ってもごく小規模なものから大規模なものまであります。大規模なものは、場合によっては増改築に当たる場合があります)。
 「増築」とは、建物に工作物を加えて床面積を増加させることです。一棟の建物として床面積を増加させる場合の他、付属建物を新たに建てることも含まれます。
 「改築」とは、以前の建物に代えて建物を建てることです。建物の全部が滅失したり、建物の全部を取り毀して新しい建物を建てる場合が典型ですが、建物の一部が滅失したり、建物の一部を取り毀して、その部分を建て直すことも改築です。また、建物の柱などの主要な構造物を取り替えることも改築に当たるとされています(この場合も、もとの建物との一体性がなくなりほとんど新たな建物を建てたと評価されるからです)。

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●改築に当たるかどうかは微妙な場合があります

 建物の全部または一部を取り毀しをして新しく建物を建てる、という場合は分かりやすいのですが、そうでない場合は、どこまでやれば「改築」になるのか、判断にしにくい場合があります。
裁判所が「改築」に当たるとして契約の解除を認めた例として、次のようなケースがあります。
(ケース①)1階の土台部分のコンクリート床が打ち直されて嵩上げされ,1階の外壁が変更されるとともに,柱,添い柱及び梁等,その躯体部分に重要な変更が加えられている上,2階の水回りの設備を2か所設置する等のため,同2階床の補強工事等がされ,さらに耐久性のより高い材質によって屋根の葺き替えなどの工事を行った。
(ケース②)基礎コンクリートが全面的に打ち直され,土台や柱,間柱等,その躯体部分に重要な変更が加えられているのみならず,床および内壁についての全面的な更新であり,外壁の大部分および屋根の一部についても更新を行った。
(ケース③)建物の内部に補強のための鉄骨を入れるなどした上で,建物外側に設けられていた階段を建物の内部に設置し直し、それに伴って,外壁を張り替え,2階の床を剥がし,2階の床面積を2平米ほど増やすなどの工事を行った。
 逆に、裁判所が「改築」には当たらないから、地主の承諾がなくても契約に違反しないとした例もあります。また、「改築」に当たるけれども、地主との信頼関係は破壊されていないから解除できない、としたものもあります。信頼関係が破壊されているかどうかの判断にあたり、「改築」が軽微か重大かということを検討している例もあります。
なかなか一線を引くのは難しいです。
弁護士も、明らかに通常の修繕の範囲内と判断できる場合以外は、「大丈夫です」とはなかなか言えません。
微妙な場合は、地主の承諾を取った方が無難です。
 なお、工事を行う建設業者に相談し、建設業者から「この程度の工事なら地主の承諾はいらない」と言われても、安心はできません。
建設業者の説明を信用したからと言っても、契約違反は契約違反です。
工事後に地主から借地契約を解除されたため、建設業者に損害賠償の請求をしたという事案の裁判例があります。
 この原告(借地権者だった人)は、建設業者の説明が間違っていて、その結果、損害を受けたから建設業者に損害を賠償する責任がある、と主張しました。 しかし、裁判所は請求を認めませんでした。色々と特殊な事情もあったようですが、裁判所は理由の1つとして「建設業者は法律の専門家ではないから、承諾が必要かどうかの説明に誤りがあっても責任はない」と言っています。

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●裁判所が承諾に代わる裁判をします

 増改築禁止特約があり、増改築をしようとしているのに地主が承諾してくれない場合、裁判所に対して、承諾に代わる許可を求めることができます(着工前に許可を求めなければなりません。工事が完成した後で許可を求めることはできません)。
 裁判所の許可があれば、地主は無断増改築を理由として契約を解除することはできません。
 この場合、裁判所は、承諾料を払うことを条件に増改築の許可をするのが通常です。
 承諾料の相場ですが、前の建物を取り壊して新築建物を建てる場合やほとんどそれに近い場合には、更地価格の概ね3%です。ただし、借地の満期が迫っている場合、建物の床面積を増やした場合、建物の用途を変更する場合(自宅に賃貸部分を追加するなど)は増額されます(最大5%といわれています)。
 逆に、建物の新築とまでは言えない程度の増改築の場合は、承諾料は安くなり、増改築の規模に応じて2%前後といわれています。
 借地権者としては、増改築には当たらないと思っているけれども、地主は増改築に当たると言い、また、承諾もしないと言っている場合には、裁判所は申立を受け付けます。その上で、工事の程度に応じて承諾料の算定をします(ただし、話し合いが成立しない場合には、裁判所が「増改築に当たらない」と言って決着を着けることもあります)。
 承諾料の支払いが必要になるとは言え、無断で工事をして地主と正式な裁判をすることを思えば(その場合も和解金を支払って終わるケースが多いと思います)、工事前に裁判所の許可を求めた方が無難です。

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