【法律問題について】

 

家賃滞納の期間がどれくらいなら解除できますか
建物の賃貸借の場合、3か月以上、家賃滞納の状態が続いていれば解除が有効と認められる傾向にあります。

  契約書には、「1回でも賃料支払いをしない場合は解除できる」などと書いてある場合がありますが、契約書のとおりにはいきません。(*1)
 賃借人にとっては、賃貸物件は生活の拠点だったり、仕事の拠点ですから、軽度の債務不履行で解除されるのは酷だというのが、裁判所の昔からの考えです。

 ただし、3か月の家賃滞納で解除できるというのは、法律で書いてあるわけではありません。従って、例外はあります

 

(*1)だからと言って、契約書に「3か月滞納したら解除できる」と書くのはどうかと思います(実際にそのような契約書を見たことがあります)。後でお話するように、3か月未満の滞納でも、信頼関係の破壊があれば解除は認められます。それなのに、契約書に「3か月滞納したら解除できる」と書くと、3か月滞納でないと解除が認められません。これに対して、 「1回でも滞納したら解除できる」と契約書に書いてあった場合、契約書のとおりにはいかない(1か月分だけの滞納では解除できない)、というだけでそれ以上の不都合はありません。

・3か月の滞納があっても解除が認められないケースもあります


 例えば、借地のケースですが、4か月の賃料不払いでも解除が認められなかった事案があります。
 東京高裁平成8年11月26日の判決ですが、これは、あとになって滞納していた地代の全額が支払われたケースです。しかも、このケースは、金融機関が借地権者に融資をして借地上建物に抵当権を設定してあり(抵当権の効力は借地権にも及びます)、地主から承諾書と「借地権者が地代の不払いをした場合には金融機関に連絡する」という一筆をもらっていました。この一筆があるのに、地主は金融機関に連絡しないで、解除をしました。その後、通算すると1年も地代が払われなかったのですが、金融機関がこれを知って滞納分全額を供託し、その後の地代も供託したという事情がありました。要するに、不払いがなくなったことに加えて、金融機関の救済(解除が認められると金融機関の担保になっていた借地権が消滅して、金融機関に損害が発生します)という側面があったようです。

 また、建物賃貸借のケースですが、過去に1年分の家賃滞納があり、その後、なんとか滞納の穴埋めをしていたのに、またまた、滞納をした、ということで賃貸人が解除したというケースで、東京地裁平成19年6月27日判決は、解除を認めませんでした。解除した時点では滞納家賃額が1か月分くらいになっていた上に、裁判の途中で滞納分を全部払ったというケースでした。判決によると、賃借人は過去に滞納があるものの、その後はなんとか滞納を解消するように努力していた、ということのようです。

 つまり、最初に3か月の家賃滞納があれば解除できると書きましたが、解除後でも賃借人が滞納分の支払をして、ほとんど滞納額がなくなってしまえば、解除が認められないこともあるということです。理屈の上では、解除した時点での滞納期間が問題で、その後のことは解除後の話じゃないかと思いますが、「本件の場合は3か月では解除は有効ではない」と裁判所に言われれば、それまでです。(*2)

(*2)ここでは、賃貸人の側に立って、解除が認められない場合もある、という趣旨で書きました。これを読んでいる方が賃借人の場合、3か月以上の家賃滞納をして解除されても、後で全額払えば、裁判所は解除を認めない、という意味には取らないでください。例えば、東京高裁平成13年11月28日判決は、借地のケースで、2か月の滞納で解除し、その2か月後に借地上の建物に抵当権を設定していた金融機関が滞納分を全て代払いしたのに、解除を認めました。このケースでは、金融機関が催告を知り、解除される前に地代の代払いができたのにしなかったという事情がありました。いずれにしても、滞納期間2か月、借地(建物賃貸借よりも一般に保護されています)、解除後間もなく全額払い、金融機関の利害にかかわる、という事情があっても解除が認められたケースもある、ということです。

・完納した場合の裁判所での和解


 滞納を穴埋めしたようなケースでは、賃借人側も「これからはきちんと払います」と言います。裁判所が和解を勧めるようなら、和解を選択した方が無難かも知れません(このあたり、裁判官の個性もでます)。
 ただし、過去の経緯がありますから、和解の条項の中に、今後、2~3か月の家賃滞納いがあった場合には当然に契約は解除になり、建物を明け渡すという条項を入れてもらいます。
 和解調書は判決と同じ効力があるため、今度、家賃滞納があった場合、もう一度裁判をすることなく明渡の強制執行ができます。
 和解後にまた家賃滞納をしたケースでも、賃借人の手違いだった(悪意がなかった)という特別な場合に解除が認められないとした裁判例があります(最高裁昭和51年12月17日判決)が、稀なケースと言えます。

 いずれにしても、家賃滞納は、失職、事業の失敗など家賃を払えなくなった、それなりの理由がある場合が多いため、3か月も家賃を支払えないケースでは、滞納している家賃の穴を埋める(過去の滞納額に加えて翌月以降の家賃も支払わなければ、滞納額は減りません)ことはなかなかできないようです。

・3か月分の滞納がなくても解除が認められる場合もあります

 3か月の滞納で解除が認められる、というのが1つの常識みたいに言われているため、3か月分の滞納でなければ解除が認められないと誤解している人もいます。(*3)

 滞納期間が3か月以下の場合でも、解除が認められるケースの1つは、これまで何回も家賃滞納を繰り返してきたケースです。これも、数日間の滞納(月末に支払わなければならないのに、数日遅れる)を繰り返した程度ではダメですが、ひどいケースになると、2か月から3か月の滞納を繰り返していたというケースがあります。それも大家さんがさんざん催促して何とか支払わせたのに、また、滞納を繰り返したり、2~3か月の滞納をした後、1か月分程度の支払いをして、また、滞納するというケースがあります。完全に支払い能力がないわけではないけれども、あまりにもひどい場合です。この場合には、2か月の滞納で解除が認められる場合があります(結構認めてくれるように思います。ただし、最低で2か月滞納です)。

 もう1つのケースは、嫌がらせで家賃を払わないケースです。
  例えば、2か月滞納した後で、家賃の半分を払い、2か月半分の滞納にして、その後は、毎月きちんと家賃を入れるというケースがありました。お金がないというよりも、賃貸人に対する嫌がらせのつもりだったようです。この場合、家賃滞納は2か月半ですが、その滞納額は何か月経っても増えもせず、減りもしないままです。このような場合も、賃貸人側で、滞納賃料額を払うように催告すれば、解除は認められます。滞納額3か月分というのは、信頼関係破壊を認める1つの目安に過ぎません。滞納額3か月分でなくても、上記のケースは信頼関係が破壊されたと認められます。
 同じようなケースで、家賃滞納1か月分をいつまで経っても払わないという場合(1か月分の滞納後、毎月、その月の家賃しか払わないケース)も、解除が認められる場合があり得ます(裁判が終わる前に払ったとしても、あまりにも嫌がらせの要素が強い場合には、裁判所は解除を認めると思います。ただし、その立証のために解除前に何回も催促しておく必要があります)。

 

(*3)契約書で「家賃を3か月以上滞納した場合には催告の上、解除することができる」と書いてある場合があります。これも3か月以上の滞納がないと解除が認められないという誤解から、このような契約にしたと思います。契約書にこのように書いてある場合には、原則として3か月以上の滞納がないと解除できないことになります。

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雨漏りすると言って家賃を払ってくれません。
賃貸人は建物の修繕義務がありますが、建物全体の使用ができない場合はともかくとして、一応、使用できる場合、賃借人は家賃全額の支払を拒むことはできません。家賃の全額を支払わないという状態が何か月(3か月程度では足りないでしょう)も続くような場合には、解除が認められます。

 雨漏りなどで建物の使用に支障がでている場合、賃借人は、支障がでている分に応じて、家賃の一部の支払を拒否することができます。しかし、建物全体の使用ができないような場合を除き、家賃の全額を支払わないということはできません。その場合は、雨漏りしているとは言え、賃借人は過剰な反応をしていることになります。そして、このような家賃滞納が長期間続くようだと、解除が認められることになります。

 とは言え、賃貸人側で修繕義務を履行していないという問題があります(雨漏りの箇所が特定できないなど面倒な問題もあり得ます)。そのため、一方的に賃借人を責められない、ということになります。
 漏水があったために家賃を支払わなかったケースで、裁判所が解除を認めたもの(東京地裁平成21年8月27日判決、東京地裁平成23年6月20日判決など)がありますが、いずれも相当長期間の不払いです。ぎりぎりどの程度の賃料不払いがあれば解除が認められるのか、ということになると何とも言えません(賃借人、賃貸人側双方の対応の仕方も判断の材料になると考えられます)。

 しかも、解除が認められたケースは、賃借人が全く家賃を支払わなかったケースなので、いくら漏水などがあるからと言っても、それはひどいだろう、ということになりました。しかし、賃借人が家賃の一部を払う場合は、やっかいな話になります
 例えば、賃借人側で、これは半額でいいんだ、ということで半分だけ家賃の支払いを続けた場合、後で裁判所が「減額できるのは、せいぜい1割が相当」と判断したとしても、信頼関係の破壊があったとは認められないから解除は認められない、ということになる可能性があります。(*1)

 賃貸人側の対応としては、修理する努力をすることや、家賃の減額について賃貸人の意見を伝えたり、協議の申入をしたりするなど、あとになって裁判所から「賃貸人は問題解決のためにそれなりの努力をした」と思ってもらえる対応をする必要があります。無論、努力したことの証拠(相手方に差し出した手紙の控えなど)はきちんと残しておかなければなりません。

 

(*1) 賃貸人から相談を受けた場合を前提に説明していますが、賃借人から、雨漏りの相談を受けると非常に悩ましく思います。法律上は、雨漏りで使用不能になった分について賃料の減額を請求できることになっています(2020年4月1日以降の契約の場合は使用不能になったらその時から当然に減額することになりました)。しかし、通常の雨漏りは、雨が降った時だけ、それも非常に狭い部分だけ雨漏りがあり、常時、借りている部分の何分の1かが使用不能になったとは言えない場合がほとんどです。使用している側としてはそれでも非常に困るので、賃料の支払いを止めて修理するように要求したいと思います。しかし、賃料の一部不払いをした場合、それが過大な不払いだして解除されてしまう危険があります。

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賃料が高すぎる、半額が相当と言って半額しか払ってくれません。
賃借人は家賃の減額を請求することができますが、減額の効果は裁判所が認めて初めて発生します。裁判所が認めるまでは、賃貸人は相当と判断する家賃の請求ができます(基本的には従来と同じ額の賃料の請求ができます)。賃借人は賃貸人の請求する賃料を払わなければなりません。半額が相当だからと言って半額しか払わない場合、家賃滞納をしていることになります。そして、この状態が長期間続く場合は、賃貸人は解除することができます。

 賃貸借契約をした後、それなりに長い年月が経つとその間に色々な経済情勢の変化があって賃料額が不相当になる場合があります。極端な例がバブル期の賃料設定で、その後のバブルの崩壊で土地の価格が下落し、それに連動して賃料額の相場も下がり、賃料の減額請求をする例が多くなりました(それ以前は、賃料の減額請求というのは法律には書いてあるけど、実際にはあり得ないとほとんどの人が思っていました)。

 バブル崩壊ほど極端な場合でなくても、賃貸借契約後の事情の変更で賃料が高すぎる状態になったという場合には、賃借人は賃料の減額を請求することができます。ただし、あくまでも契約後の事情変更が必要です。賃貸借契約当時に周辺よりも賃料額を高く設定する契約をしておきながら、後になって高いから減額請求する、ということは認められません。

 賃料の減額請求は、賃借人が減額の請求をしたときから効力が発生します。ただし、最終的にこれが有効かどうか判断するのは裁判所です。裁判所が減額を認めた場合、賃貸人は請求を受けた時からの受け取った賃料との差額を返還しなけれせばなりません(年1割という高額な利息をつけなければなりません)。
 しかし、請求後、裁判所の判断がでるまでは、先にお話したように賃貸人は相当と判断する賃料額の請求ができます。基本的には、従来の賃料額の請求ができます。賃借人は、請求された賃料額を支払わなければなりません。賃借人としては半額が相当だと思って賃料減額請求をしても、従来どおりの賃料を支払う必要があるのです。払わなければ、債務不履行(家賃滞納)です。

 ただし、半額は払っていますから、3か月で解除が認められるということにはならないと思います(滞納額としては1か月の半分ですから)。6か月間、半額の支払いが続くと3か月分になるので、期間としてはこの程度は必要かと思います。もっとも、家賃を半分に減額するというのは、かなり極端な話です。裁判所で認められる可能性もないのに賃料減額請求にかこつけて家賃を半分しか払わない、という場合はある程度期間が短くても、解除が認められることになります。

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賃料を増額するという通知を出したのに、従来の賃料額しか払ってくれません。
先ほどと反対のケースですが、賃貸人が賃料増額請求をした場合でも、賃借人は、「相当と認める額の賃料」を支払っていれば債務不履行にはなりません。「相当と認める額」を判断するのは賃借人自身です。ただし、以前よりも低い金額を支払うのはダメです。つまり、原則として従来の賃料額の支払いをしていれば、後になって裁判所が賃料増額を認めるような場合でも、家賃滞納をしていることにはなりません。従って、解除することはできません。

 ただし、従来の賃料額が、賃貸人の負担する税金(固定資産税など)など建物の維持管理に必要な額よりも低い場合に、賃借人がそのことを知りながら、従来の賃料額の支払いを続けている場合には、解除が認められます。 借地では希にそのようなケースがありますが、建物の賃貸借では相当例外的なケースと言えます。

 なお、賃料増額請求をしたのに賃借人がこれに応じない場合には、裁判所で決めてもらうことになります(裁判を起こす前に調停の申立をしなければなりません)。裁判所が賃料増額を認めれば、賃貸人が賃料増額の請求をした時から、賃借人が支払っていた賃料との差額を請求することができます。また、これについて年10%の利息の請求ができます。

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契約書には、「1か月でも家賃の支払いがなかったら、催告をしなくても契約を解除できる」と書いてあるのですが、これはだめですか。
契約書に書いてあっても、建物の賃貸借契約は、賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊されたと認められる事情がない限り解除できない、というのが裁判所の解釈です。1か月分の家賃の不払い(今月末までに翌月分支払いの場合、翌月になると1か月分の不払いになります)で催告なしの解除が認められることはほとんど考えられません。

 1か月程度の家賃滞納では、まだ信頼関係が破壊されたとは認めてくれません(1か月の家賃滞納があった後、結果的にその賃料が支払われた場合には解除を認めてくれない、という趣旨です。裁判をやっているうちに何か月も経過してその間も家賃滞納している場合には、最終的に解除を認めます)。

 また、原則として解除の前に催告が必要だというのが裁判所の考えです。催告して賃借人に支払いを促してもだめだった場合に、信頼関係の破壊があるというのが裁判所の原則的な考えです。
 このため、契約書に「1か月でも滞納したら、催告しなくても解除できる」と書いてあった場合でも、3か月分くらいの家賃滞納がないと、催告なしでは解除を認めてくれません。

 なお、催告なしに解除できると契約書に書いてあっても、催告をしてはいけないということではありません。ですから、ここは無難に催告をした上で、解除した方が間違いがありません(催告の際に、「催告期間内に支払いのないときは改めて通知することなく、賃貸借契約を解除することを本書をもって通知します」と書いておけば、催告の後でもう一度、解除の通知を出す必要はありません)。(*1)

 このように書くと催告なしで解除できるという特約(「無催告解除特約」)は意味がないように思えます。しかし、催告の内容証明郵便を賃借人に送ったのに賃借人が受け取らない場合(差出人に戻されます)、催告ができなかったことになります。このような場合に、無催告解除特約があれば、1か月の家賃滞納ではだめですが、長期の家賃滞納の場合には、事前の催告なしで訴状で解除することが認められます(訴状は、相手が受け取らなくても、裁判所が発送しただけで受領したものとみなされる場合があります。この場合、解除の意思表示も同時に相手方に伝えられたことになります(*2))。無催告解除特約がない場合でも、かなり長期の家賃滞納がある場合、無催告の解除が認めらる場合がありますが(*3)、特約がある場合はより解除が認められやすいのです。

 

(*1) 完全にお金がなくなったわけではないけれども、ある時払いのような形で家賃を払う人もいます。「何度も何度も催告して嫌になった。出ていってほしい」という相談は珍しくありません。「催告すると無理してでもお金を作って払うと思うので、無催告で解除できませんか」という相談もあります。
 しかし、このような場合、無催告解除をして、後で全額家賃を支払われると、裁判所が解除を認めてくれるかどうか心配になります。催告期間は1週間程度ですから、3か月程度の滞納家賃をまとめて払えるかどうかは何とも言えません。このような賃借人の場合、今回は催告期間内に支払ったとしても、次回は分からないので、催告した上で解除するという、通常の方法を選択するのが無難です。

 

(*2)これを付郵便送達(ふゆうびんそうたつ)と言いますが、正確に言うと、送達の効果で解除の意思表示が伝えられたとみなすわけではありません。訴状で解除する場合、付郵便送達の際、裁判所では正式な送達用の書留郵便の他に訴状副本を入れた普通郵便も同時に郵送します。書留の方は相手が不在の場合、郵便局で保管し、保管期間経過後に裁判所に返送されますが、普通郵便は不在でも配達され、解除の意思表示が相手方に到達したとみなされます(普通郵便が郵便受けに入れられると、相手方はいつでもそれを読むことができる状態になるので、相手方に到達したものとみなされます)。

 

(*3)無催告解除特約がない場合でも、特に背信性が強い場合には、催告なしで解除が認められるとされています。
 しかし、どれ位長期の家賃滞納の場合に解除が認められるのか、ということになると問題があります。最近の裁判例を調べてみましたが、無断転貸や用法違反の場合に無催告解除を認めた例はありますが、家賃滞納だけの事案で、特約なしで無催告解除を認めた事例は見当たりません(見つけられないだけかも知れませんが)。
 古い裁判例では、11か月の家賃滞納でも、無催告解除を認めなかった例があります。しかも、最高裁です(最高裁昭和35年 6月28日判決)。この事例は、解除の後に滞納賃料を全額支払ったというわけでもありません。一応、これが先例になっているので、家賃滞納の場合には、無催告解除特約がない限り、催告なしには解除できないと思った方がいいと思います。
 特約がない場合には、催告の内容証明を受け取らない場合に備えて、内容証明郵便と同文の手紙を内容証明郵便と同時に普通郵便で出すなどの工夫が必要になります(普通郵便が相手方の郵便受けに入った時に、相手方はその手紙を読むことができる状態になるので、催告を受け取ったことになります。内容証明郵便は、相手方が不在の場合には郵便局に持ち帰りになるため、相手方が読むことができる状態になりません。しかし、普通郵便だけでは郵便物の内容や、いつ配達されたのか証明できません。普通郵便と内容証明郵便を同時に差し出すのは、普通郵便の内容や、いつ配達されたのかを証明する手段になるからです)。

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仮処分というのは何ですか
家賃滞納の場合に仮処分を利用するのは稀なケースです。
 また、仮処分と言っても色々な種類がありますが、家賃滞納の場合に利用するとしたら、その仮処分は、「占有移転禁止の仮処分」です。
 現在の占有者(通常は賃借人)を固定させるために行うものです。
 現在の占有者(賃借人)以外の者が占有を始めた場合、賃借人を被告として判決を取ったとしても、建物明け渡しの強制執行をすることができなくなります(判決の被告に対してしか、強制執行できないからです)。

 通常は、こんなことを心配する必要はないのですが、家賃を滞納している賃借人ができるだけ建物明け渡しを引き延ばそうとしたり、賃借人の債権者(高利の債権者など)が少しでも債権を回収する手段として、賃借人以外の者を占有させることがないわけではありません(非常に特殊な場合です)。

 そこで、色々な状況から、賃借人が第三者に占有を移すおそれがある場合には、建物明け渡しの裁判を起こす前に、裁判所に「占有移転禁止の仮処分」の申立をします。これは、賃借人に対し、占有を第三者に移転することを禁止するという仮処分です。

 ただし、なんとなく心配だということでは裁判所は仮処分を認めてくれません。申立をするためには、仮処分の必要性を裁判所に納得してもらう必要があります。必要性というのは、放置しておくと占有を移転してしまうおそれがあるという事情です。

 例えば、Aという会社に物件を貸した後、家賃の滞納があり、現地に行ってみるとAの他にBという会社の看板が掲げられていたという場合は、AとBを相手に裁判をすることになります(単に看板だけで、Bという会社が実際に占有していない場合はその必要はありませんが)。しかし、こんなことがあると、今度は、また別の会社の看板を掲げてその会社も占有を始めるかも知れません。そうすると、何回裁判を起こせばいいのか分かりません。そこで、このような場合には、占有移転禁止の仮処分の必要があることになります。
 また、具体的に何かしているわけではなくても、催促に行った管理会社に対して、「文句があるなら裁判でもすればいい。ただし、こちらは徹底的に妨害してやる」などと暴言を吐く場合には、そのことを陳述書や報告書にしてもらい、それで必要性を認めてもらいます。(*1)

 この種の仮処分の裁判は、相手方を裁判所に呼び出すことはしません。そんなことをすれば、相手方にこちらがやろうとしていることが知られてしまい、仮処分決定が出る前に占有を移されてしまうおそれがあるからです。つまり、申立人側が提出した資料だけから裁判所は、必要性などを判断することになります(逆に言うと、申立人が提出した証拠だけで、裁判所に認めてもらう必要があります)。

 また、あくまでも「仮の」処分ということで、保証金を法務局に納める必要があります。いくら納めるのかは、裁判所が決めます。
 家賃の滞納が数か月になっていて裁判をすれば解除が認められる事案で、上記のような必要性が認められる場合には、1か月分の賃料に少し上乗せした金額程度の保証金の供託が必要になります (*2) 。この保証金は、最終的にはまるごと返還されるのが原則です。

 仮処分決定が出ても裁判所が自動的に仮処分の執行をしてくれるわけでありません。仮処分決定が出たら、執行官に執行の申立をします。申立をすると、執行官が現地に行って、この仮処分の執行をします。具体的には、執行官が相手方に対し、占有移転が禁止されたことを告知するとともに、そのことが書いてある紙を室内に掲示します。

 仮処分の執行ができたら、占有者を被告にして、建物の明け渡しの裁判を起こすことになります。占有者が賃借人以外の第三者の場合、不法占有を理由とする明け渡し請求になります。この裁判と合わせて、賃借人に対しても裁判を起こすことができます。なお、1つの物件を複数の者が占有していると認められる場合には、共同占有だとして、全員に対して、明け渡しの裁判を起こします。

 この仮処分を執行すると、もしも裁判の途中で占有者が変わってしまった場合でも、仮処分をした時の占有者を被告とする判決で、新しい占有者に対する強制執行ができます。(*3)

 

(*1) このケースは、口だけかと思いましたが、仮処分の執行に行ったら、不正規の民泊をしていることが分かりました。後から考えてみれば、利用目的がはっきりしないのに、建物の返還に応じないので、おかしな利用をしている可能性がありました。

 

(*2) 賃料月額100万円のケースで、裁判官から保証金300万円と言われたことがありました。保証金は、本裁判で敗訴した場合の賠償金の担保になります。占有移転禁止の仮処分と言っても色々なケースがあります。建物賃貸借の場合には、家主に無断で占有移転することはできないので、万一敗訴しても、占有移転禁止で賃借人に損害が発生することは考えられません。そこで裁判官を説得して、保証金を100万円にしてもらいました(これが最低額だと言われましたが)。いくら後で返ってくるとは言え、300万円と言われるとは思っていなかったので準備していませんでした(決定から3日程度以内に供託すればいいのですが、通常は決定が出たらすぐに供託するので予め準備しておきます)。

 

(*3)仮処分の執行に行くと、執行官は、建物の占有者が誰なのか判定します(執行官に説明するため弁護士が同行します)。
 この時、仮処分の相手方以外の者が占有者だと判明した場合、その仮処分は、執行できなかった(執行不能)ことになります。そこで、もう一度、実際の占有者を相手方にして、仮処分の申立をする必要があります。次の仮処分の執行までにまた占有者を変えるような悪質な場合もあります。その場合は、さらに仮処分を取る必要があります。
 ただし、2回目以降は、申立の時点で「債務者(占有者)不特定」の仮処分が認められることがあります。この仮処分が認められると、執行官が現場に行った時に実際に占有していた者が占有者と認定され、その者に対して占有移転禁止の仮処分が行われます。そして、その者を被告として裁判をすることになります。
 仮処分が必要な場合というのは、家賃滞納事件では希ですが、その必要がある場合には、仮処分が無事に執行されるまで、非常にスリリングな気持ちになります。

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【裁判をしようかどうしようか】

 

賃貸物件の鍵を変えたり、ドアを外したりして退去させることはできませんか。
いけません。

 法律上の手続を取るのは時間も費用もかかる、ということで、手っ取り早く、追い出したいというお気持ちは分かりますが、法律上、許されない行為です。

 この問題は、一部の賃料保証会社の取立や賃借人への追い出し行為によって社会問題になり、裁判所も厳しい判断をしています。

 裁判例などを見ると、建物内の相手方の荷物を廃棄して、ドアの鍵を変えて中に入れないようにした人もいたようです(契約書で、荷物を廃棄されても異議がないと書いてあっても、裁判所は損害賠償を命じます)。

 荷物を廃棄するのは極端な印象がありますが、ドアの鍵を変えて中に入れないようにしたり、ドアを外してしまうことも同じように違法です。

 相手方から、損害賠償を請求されたり、場合によっては、警察が乗り出してくるようなことになります。家賃滞納をしている相手方が悪いと言いたいところですが、警察は家賃滞納で相手方を捕まえたりしません。追い出そうとした側の違法行為が問題になります。

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自分で裁判などの手続をすることはできますか。
できないとは言えません。
 しかし、催告書や訴状を自分で書いたり、強制執行の申立まで自分でするとなると、相当に難しいのではないかと思います。何らかの経験があるか、勉強のためにやってみたいという気持ちと時間がかかっても仕方がないということでない限り、お勧めできません。
 書類関係を全て誰かに書いてもらうなどして、自分では法廷に立つだけということなら可能かも知れません。(*)


  自分で裁判をやるというのは、費用のことを考えてのことだと思います。しかし、おそらくは一番費用がかかる強制執行は誰がやっても同じ費用がかかります。書類作成だけ誰かに有料で頼んで自分で裁判をやる場合でも、どれだけ節約になるのかは分かりません。
 「費⽤」のところでお話したように⼀番⾼額になるのは、弁護⼠費⽤よりも、強制執⾏の費⽤です。これがかからないようにするためには、相手方を説得して任意に退去してもらうしかありません。弁護⼠は、裁判をやる場合でも、判決をもらった後でも、賃借⼈に対して、任意に退去するように説得します。任意に退去するかどうかは相⼿によりけりですが、こうした説得はご本⼈ではなかなか困難だと思います(それができるくらいなら、裁判を起こす必要もありません)。弁護士は、説得と並行して淡々と手続を進めます。拒否しても最終的には強制執行で追い出されると思うと、任意に退去する気持ちになるのです。

 

(*)相手方が内容証明や訴状を受け取らなかった場合や、相手方が裁判所に来て、なにか訳の分からないことを言う場合などは、ご本人では対応できない可能性があります。特に、相手方が事業者の場合などは、弁護士が代理人でないと賃料を滞納しているのに、なめてかかる場合があります。

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裁判所に行く必要はありますか。
弁護士に依頼した場合ですが、家賃滞納を原因とする建物明け渡し請求の事案では、通常、弁護士が裁判所に行くだけで、ご本人は裁判所に行く必要はありません。
 ただし、「雨漏りがするので修理してほしいと言ったのに修理してくれないので家賃を払わない」というように、貸主側に落ち度があるので家賃を払わないと主張している場合には、そのことを説明するために裁判所に行かなければならないこともあります(その場合も、弁護士と打ち合わせをした上で、1回で済むのが通常です)。

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【基本的な姿勢について】

 

できるだけ費用をかけないでやることできませんか
手続や費用の説明でお話しているように、最終的に強制執行になった場合にかかる費用が一番大きな金額になります。
 弁護士は、できるだけその前に任意に退去するように相手方を説得します。しかし、これも相手方によりけりです。
 相手方によっては最後まで抵抗することもあります。抵抗しても、強制執行されてしまうのですから、無駄な抵抗です。

 なお、相手方が、強制執行の前に退去するのは、結局、最後には強制執行されると思うからです。ですから、相手方が任意に出て行かないときには、強制執行をするという覚悟を持ってください。その覚悟がないことが相手方に見透かされると、相手方は退去しません。その場合は、かえって高くつくことになります。

 一応、経験的な話ですが、賃借人が事業者の方が、強制執行をしなくて済む傾向があります。居住者は、裁判所からの呼出があっても、出頭しないので判決が出ます。話し合いもできないので、執行官に強制執行の申立をするしかなくなります。

 ところが、事業者の場合は、多くの場合、裁判所に出頭して「もうしばらくするとまとまった入金があるので払える。それまで待ってほしい」などと言う場合が多いです。具体性はありませんし、滞納した賃料に加えて今後の賃料も払えるとは思えないので、判決を求めた上で、裁判の後で法廷の外で話をします。猶予期間を与えて、自主的に退去するように言って合意書を作ります。多くの場合、この約束は守られます。約束を守らない場合には、判決で強制執行するだけですから。なお、相手によりけりですが、判決の前に裁判所で裁判上の和解をして同じように任意で立ち退いてもらうこともあります。特に、事前に仮処分をかけた場合には、保証金取戻の手続のためにそうします。
 中には弁護士を依頼する事業者もいますが(少ないながらも売上があるので、家賃を払わなければ生活できますし、弁護士の費用も払えます)、この場合は、引き延ばし目的です。理由がない引き延ばしがほとんどで、裁判官も怒ります。結局、猶予期間を与えての和解になりますが、この場合も約束は守られます(弁護士着いていますから)。特に飲食店の場合には、強制執行になると費用が多額になります。全部は持って行けないので荷物の所有権を放棄してもらって退去してもらった方が賃貸人には有利です。
 このような事情があるので、居住者の方が強制執行費用がかかる傾向があります。あくまでも一般的な傾向です。

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立ち退き料を払って出て行ってもらうことはできませんか。
強制執行などの費用がかかるからと言って、相手方に立ち退き料を支払うことは賛成できません。
 立ち退き料を支払う根拠がありません。契約違反をしているのは相手方だからです。

 こちらから立ち退き料のことを言い出せば、相手方は「引越の費用もないので、先に半分でも立退料がほしい」と言う可能性があります。仕方がないと思って、先払いをしても、相手方が約束どおり出て行かない可能性もあります。そうなると、ますます被害が大きくなります。もう少し払ってくれれば出て行くなどと言われ、すでに払ってあるお金が無駄になると思い、また、払ってしまうということもあるようです。そして、さんざんお金をとられた挙げ句、最後に執行費用をかけて強制執行をすることになります。この場合、それまでに払ったお金は全て無駄になります。

 私自身、明け渡しと引換にお金を支払ったケースがないわけではありません(明け渡し前には支払いません)。ただし、純粋な立ち退き料ではなく、貸店舗(飲食店)のケースで、使用可能な備品があったためその買取料として支払いました。しかも、相手方に弁護士が就いていて、相手方からの申入があったケースです。

 執行費用を払いたくないから立ち退き料を支払う、ということをこちらから言い出せば、足下を見られます。基本的には、家賃滞納のケースでは立ちち退き料の支払いはしないという方針で臨むべきです。

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和解や調停で穏便に済ますことはできませんか。
相手方とは、賃貸借契約以外に人間関係がないのが普通ですから、穏便に済ます必要がありません。
 親戚や知人などが相手方になる場合は、確かにできるだけ穏便に済ませたいと思います。しかし、調停などが適当かどうかはケースによります。

 賃貸人が修理をしないので家賃を払わない、と主張しているようなケースでは調停も考えられます。しかし、通常の家賃滞納のケース(お金がないから払わないケース)では、調停は家賃滞納をしている賃借人側に引き延ばしの機会を与えるだけです。調停は意外に時間がかかります。しかも、相手方が同意しないと調停では解決できず、結局、裁判をやることになります。調停をやっていた期間、時間が無駄になります。

 これに対して、裁判を起こして和解をすることはあります。和解と言っても、2つのケースがあります。
  1つは、立退を前提として明渡の条件について合意する場合です(条件と言っても立退料は払いません。立退の時期などについての条件です)。強制執行をやらなくて済むので、依頼者(賃貸人)にとっても有利です。この場合、判決をもらった後で、和解をする場合(判決をもらってすぐに強制執行をするのではなく、約束が守られなかったら、判決で建物明渡の強制執行をします)と、判決前に裁判所で和解をする場合があります。裁判所での和解は和解調書が作られます。この調書は判決と同じ効力があるので、約束が守られない場合は和解調書で強制執行ができます。裁判所で和解をする場合も時間はかけません。原則として、第1回の期日に和解します(相手方が出頭しない場合には和解できないので判決をもらいます)。

 もう1つの和解のケースは、賃貸借関係を続ける場合です。これは、相手方が滞納家賃を全額を支って、今後はきちんと支払うと約束する場合です(全額払っても、和解しないで明け渡しの判決をもらう場合もあります。相手方の態度と依頼者の意向によります)。この場合、裁判所が作る和解調書に、「今後、家賃滞納があった場合は、当然に解除になり、立ち退く」という条項を入れます。この条項があると、また支払をしなくなった場合、もう一度裁判を起こさなくても、すぐに強制執行をすることができます。
 ただし、このような和解をしたケースの中には、1年もしないうちにまた賃料を払わなくなり、結局、和解調書に基づいて強制執行をしたこともあります。

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相手から逆恨みされませんか。
内容証明を送ったり、裁判を起こした場合に、相手方から、不満や抗議の電話などがあるのではないか心配だということだと思います。

 弁護士が送る内容証明には、「この件については当職が代理人として担当するので、連絡などある場合には、当職宛てにするよう申し入れる」という文章を入れます。
 万一、相手方から直接、連絡があった場合(直ちに全額支払うので勘弁してほしいという連絡なら別ですが、それ以外の場合)、「弁護士に依頼しているので、弁護士と話をしてほしい」と対応してください。頭を下げて連絡してきた場合でも、直接、話をしてしまうと、言質を取られたり、相手方に遠慮するような話をして、後で話をこじらせることになります。

 問題なのは、不満や抗議の電話です。家賃を払っていないのは相手方の契約違反ですが、「払うつもりだったのに、なぜ弁護士などに依頼するのか」などと言ってくる場合もあるかも知れません。
 その場合も、「弁護士と話をしてほしい。自分は何も話さないように弁護士に言われている」と言って下さい(この種の話は、他人=弁護士のせいにした方が気が楽です)。

 執拗にこの種の電話が繰り返されるような場合には、法的にこれを止めさせる手続を取ります(別料金になります)。直ちに弁護士に連絡してください。
 ただし、家賃滞納でこのような相談を受けたことはないので、心配する必要はないと思って下さい。
 とは言え、このような事態が起こるかも知れないと思う場合には、相談の時にお伝えください。

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【滞納賃料の回収】

 

賃料などの回収はできますか。
明け渡しの裁判をしなければならないような場合には、ほとんど回収できないと思って下さい。貸している建物を取り戻すことが優先だと思ってください。

 判決では、建物の明け渡しの他、滞納家賃の支払を命じているため、強制執行ができます。
 このため、建物明け渡しの強制執行とともに、建物内の動産の差し押さえの申立をすることは可能です。しかし、執行官は、家具や備品の差し押さえはしません。宝石でもあれば話は別ですが、執行官は引き出しの中を調べるようなことはしません。ざっと室内を見回して、執行財産なしということで終わりです。つまり、動産に対する強制執行は申立をしても無駄ということです(強制執行をしても回収できない場合、税務上の貸倒の処理ができます。このために強制執行不能になることを承知して動産執行の申立をすることもあります)。

 貸事務所、貸店舗の場合、相手方はこれと別に自宅があります。この自宅を差し押さえることは可能ですが、自宅も賃貸物件だったり、あるいはローンその他の担保がついていて執行できたケースはありません。

 それでは、連帯保証人はどうでしょうか。これも人によりけりです。内容証明が届かないケースもあります。自宅住所の登記簿を取って確認しても本人の所有でなかったりすると強制執行もできません。

 建物明け渡しの裁判に、連帯保証人も合わせて被告にすることができます(連帯保証人に対しては、未払い賃料の請求だけです)。しかし、これも善し悪しです。連帯保証人に対する関係で裁判が長引いてしまうおそれがあるからです(判子を押した覚えがないなどと言われると相当長期化してしまいます)。
 それでも連帯保証人から賃料の回収ができればいいのですが、裁判が長引いただけで回収できなかったのでは有害です。とりあえずは、建物明け渡しを先行させるのが得策だと思います。

 とは言え、私は、連帯保証人として払わされる側の代理人になったことがあります。すでに建物の明渡が終わった後の請求でした。連帯保証人本人は亡くなっていて、私は、相続人の代理人でした。本人に財産があったので、相続放棄はできません。結局、支払わざるを得ませんでした。こんなケースもありますが、賃借人が家賃滞納で追い出されるようなケースでは、連帯保証人にもお金がない場合が多く、回収できるのは稀ではないかと思います。

 なお、賃料保証会社を利用している場合は、取るべき手続自体が違う場合がありますので、相談の際にお伝えください。

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弁護士 内藤寿彦(東京弁護士会所属)
内藤寿彦法律事務所  東京都港区虎ノ門5-12-13白井ビル4階 電話・03-3459-6391