遺言があるのに違う登記をされた

【目次】
1.遺言と違う登記をされる場合とは
 (1) 原則としてすぐに登記できます
 (2) 共同相続の登記をされた
 (3) 古い遺言書が利用された

2.遺言と別の登記をされるとどうなるか
 (1) 所有権がなくなるのか?
 (2) 以前は登記がなくても権利の対抗ができました
 (3) 2019年7月の相続から制度が変わりました

3.どうしたら本来の登記にできるか
 (1) 協力してくれなければ裁判
 (2) 仮処分

4. 相続人の債権者の差し押さえがもっとも危険です
  

1.遺言と違う登記をされる場合とは

(1) 原則としてすぐに登記できます

 遺言書に、「特定の不動産をAに相続させる」と書いてあれば、Aが共同相続人の1人の場合(*1)、遺言書を書いた人が亡くなると当然に、Aがその不動産の所有権を取得します。そして、その遺言書を法務局に持って行けば、亡くなった人の登記をA名義にすることができます(公正証書遺言の場合です。自筆遺言の場合には検認の手続が必要です)。

 ところが、登記しようしたら、亡くなった人から別の人の名義になっていたということがあります。そうなると、遺言書を法務局に持って行ってもAの名義の登記はできません
 別の人の名義になっていた場合として、亡くなる前に名義が変わっていた場合もありますが(*2)、ここでは、亡くなった後で、登記の名義が変わった場合についてお話します。


(*1) 相続人以外に「相続させる」とした場合は「遺贈」です。遺贈を受けた第三者は、遺言書だけでは登記名義の移転ができません。遺言執行者か相続人全員が、遺贈を受けた人に対して、移転登記手続をする必要があります。この場合に、相続人が共有名義の登記をしてそれを別の第三者に移転してしまうと、遺贈を受けた人は所有権を失うことになります(後で説明しますが、2019年7月以降に相続が発生した場合には、相続人に「相続させる」という遺言の場合にも、登記する前に、第三者に登記が移るとその不動産の法定相続分に当たる持分の範囲でしか、対抗できなくなります。つまり、その範囲以外の持分は第三者に移ってしまいます)。(▲本文へ戻る

 (*2)Aに「相続させる」という遺言を書いた後で、遺言を書いた人が、その不動産を第三者に譲渡した場合には、Aに「相続させる」という遺言を取り消したことになります。これについては、「基礎知識」の「遺言の変更・取消」の「生前処分による遺言の撤回」をご覧ください。(▲本文へ戻る

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(2) 共同相続の登記をされた

 遺言をした人が亡くなった後で、登記の名義が変わった場合についてお話します。
 亡くなった人が親で、相続人はその子でAとBの2人ということで説明します。

 亡くなった後で遺言と違う登記がされる場合として、2つのケースがあります。
 その1つ目は、亡くなった後で、AとBがそれぞれ1/2のずつの共有という形で登記された場合です。1/2ずつというのは、AとBのそれぞれの法定相続分です。法定相続分で共有しているという登記がされたことになります。

 このような登記は、Bが単独ですることができます(*1)
 亡くなった親の戸籍を提出して登記の申請をすると、法務局は、法定相続分で相続したという内容の登記をします。法務局は遺言書があるのかどうか知らないので、申請があれば、このような登記をします。

 しかし、Bのこのような登記申請は、Aに対して悪意がある可能性があります。
 Bが、遺言書があるのを知らない場合には、遺産分割の協議をして、その不動産を自分のものにしたいと思っていることがあります(重要な財産だったり、遺産の中で不動産がそれしかない場合など)。
 しかし、遺産分割でその不動産がBのものになった場合には、遺産分割協議書を法務局に提出すれば、亡くなった人の名義から直接、Bの名義に移せます。AとBの共有名義にしてしまうと、Bの単独名義にするのに、かえって手間がかかります。わざわざ手間のかかることをする人はいないので、この場合、Bは遺言の内容を知っていて、悪意で共有の登記をした可能性があります。

(*1) このような共同相続の登記を、B(共同相続人)以外の者がする場合もあります。相続登記の最後を見ると、「代位者」として、全く知らない人の名前が書いてあります。その次の行には「代位原因」として「・・・の強制執行」などと書いてあります。これは、Bの債権者が、判決など強制執行が可能な書面を持っていて、それに基づいて、代位登記(Bに変わって登記すること)をしたことを意味します。これはB本人が相続登記をした場合よりも遙かに深刻です。この相続登記の後に、「B持分差し押さえ」の登記がある場合は手遅れです。Bの持分に相当する共有分は取り戻せません。つまり、Bが第三者に持分を譲渡した場合と同じことになります。(▲本文へ戻る)

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(3) 古い遺言書が利用された

 もう1つのケースは、Bの単独名義になっている場合です。
 この場合は、偽造書類を使ったのでなければ(*1)(*2)、親が最初に「その不動産をBに相続させる」という遺言書を作り、その後になって、今度は「その不動産をAに相続させる」という遺言書を作成した場合です。
 この場合、後の遺言書で最初の遺言書は取り消されたことになります。ところが、Bが取り消された遺言書で法務局に登記の申請をすると、法務局は2通の遺言書があることを知らないので、B名義で登記してしまいます

 この場合、Bが遺言が取り消されたことを知らないで(後でAに相続するという遺言が作成されたことを知らないで)、登記の申請をする場合もあります。
  Aに相続させるという遺言があることを承知していた場合でも、 Aに相続するという遺言は無効だと判断して、登記する場合もあるかも知れません。また、Aに相続させるという遺言が有効だと思っても、悪意で以前の遺言書を使って登記する場合もあり得ます。

(*1) 偽造書類で、登記を移転させるとしたら、偽造の遺言書か、偽造の遺産分割協議書を使うことになります。ただし、遺産分割協議書は、全ての相続人が署名・押印して、印鑑証明書を付ける必要があります。実印と印鑑証明書を騙し取るなどしないと実行できません。遺言公正証書の偽造はほぼ不可能です。自筆遺言は、偽造可能ですが、裁判所の検認手続を受けないと移転登記できません。検認手続は全ての相続人に通知されるので(通知の時点では遺言書の内容は分かりませんが)、Aに知られないように登記名義を移すことはできません。(▲本文へ戻る

(*2) 相続人ではないCが、偽造の権利証などを使って、Aから売買の形式でCに所有権を移転させる登記をした場合には、登記自体が完全に無効です。また、このCの登記には、法定相続人のBの権利が含まれていません。このため、このような登記に対しては、Aは、Cに対しては勿論、Cから移転登記を受けた第三者に対しても、全部の権利を主張できます。なお、このような登記がされた場合は、 遺言がなくてAに1/2の権利しかない場合でも、移転登記の抹消の請求ができます(最高裁昭和31.5.10判決)。 (▲本文へ戻る

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2.遺言と別の登記をされるとどうなるか

(1) 所有権がなくなるのか?

 共有の名義でも、Bの単独の名義でも、本当ならAの単独の名義で登記されるはずなのに、それ以外の登記がされてしまったことになります。
 この場合、Aの所有権がどうなるのか、という話ですが、遺言をした人が亡くなると、登記と関係なく、不動産の所有権は、Aのものになります。AやBが遺言を見たかどうかと関係なく、自動的にそうなります。

ただし、第三者が登記をしてしまうと権利を失う場合があります。

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(2) 以前は登記がなくても権利の対抗ができました

 AとBの共有になっている場合でも、Bの単独名義の場合でも、共同相続人のBに対しては、Aはその所有権を対抗できます(自分が所有者だと主張できるという意味です)。

  問題は、Bが自分の登記を第三者に移した場合です(AとBの共有名義の場合は、Bの持分を第三者に移した場合です)。
 この点については、遺言をした人が亡くなったのが、2019年7月1日以後か以前かで違います (そのように法律が変わりました)。

 相続の開始(遺言した人が亡くなった日)が、2019年6月30日以前の場合には、Bが登記名義を第三者に移した場合でも、Aは、その第三者に対して、所有権の対抗ができます。その第三者から別の第三者に登記名義が移った場合でも、Aは所有権の主張ができます。
 つまり、Aは、第三者に対して、登記の変更や移転登記の抹消を請求できます(要するに、Aの単独名義にすることができます)。

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(3) 2019年7月の相続から制度が変わりました

 これに対して、相続の開始(遺言した人が亡くなること)が、2019年7月1日以降の場合には、取扱が違います遺言書がそれ以前に作られていたとしても、これまでとは違う扱いがされます。
 この場合、A(不動産を相続した人)は、法定相続分を越える部分(1/2を越える部分)について、登記がないと第三者に対抗できなくなります(法定相続分の1/2については登記がなくても対抗できます)。
 例えば、相続後にAとBの1/2ずつの共有登記がされた場合に、Bが1/2の権利を第三者に売ってしまい、第三者が登記をすると、Aはその部分について自分が遺言で権利を取得したことを対抗できません(つまり、権利を失うことになります)。Bの債権者が登記されているBの持分を差押えした場合も同様です。

 また、Bの単独登記がされた場合に、Bがその不動産の権利を第三者に売ってしまい、第三者が登記をした場合、Aは法定相続分の1/2については登記名義がなくても権利の対抗ができます。しかし、残る1/2については対抗できず、権利を失うことになります。Bの債権者が不動産を差し押さえた場合も同じことになります。(*1)

 この点は、Bの単独登記が、偽造書類や、取り消された遺言書によってなされた場合も同じです。この場合、Bの単独の登記が第三者に移転しても、Aの権利のうちAの法定相続分相当の権利(1/2の持分)は消滅しません。この部分は、Aは登記がなくても、第三者に対抗できるのです。しかし、遺言者からもらった法定相続分を超える権利(残りの1/2)については登記がないと第三者に対抗できなくなります。 (*2)

 なお、改正法が適用されるのは、あくまでも、相続の開始の日が2019年7月1日以降かどうかですから、それ以前に相続の開始があった場合には、今ごろになって突然、遺言書がでてきた場合でも、登記がなくても、遺言書で「相続させる」とされた権利を第三者に対抗できます。逆に、遺言書を作ったのが何年前でも、2019年7月1日以降に相続が開始する場合には、改正法が適用されます。(*3)

(*1) 一連の相続法の改正は、問題が多いのですが、特に、この遺言と登記の取扱については、疑問があります。この改正で保護されるのは、Bから持分を買った第三者や、Bの債権者です。しかし、持分だけ買う人は、ほとんどいません。これに対して、Bの債権者は、部外者で遺言書の内容を知ることができないから、保護されるべきだという説明がされます。しかし、Bの債権者は、Bの財産から債権の回収をすべきで、たまたまBの親が亡くなったからと言って、その財産をあてにして、Aよりも優遇する理由はないと思います。債権(預金も債権です)の相続について金融機関の便宜を考慮したのでしょうか。(▲本文へ戻る

(*2) Bが単独で所有権の登記をするためには、偽造の遺言を使うか、後で取り消された古い遺言書を使うことになります。どちらの場合も、遺言書は無効なので、そのような遺言書を使った登記も無効です。そのため、この場合には、登記が第三者に移転してもAの権利に影響しない、という意見もあると思います。改正法が施行されたばかりで裁判例がないのですが、もしかしたら、将来、この場合はAの権利(法定相続分を超える部分の権利ですが)は消滅しない、という判決がでるかも知れません。しかし、無効の遺言書を使ったと言っても、「 相続人ではないCが、偽造の権利証などを使って、Aから売買の形式でCに所有権を移転させる登記をした場合 」(1の(3)の(*2)のケース)と違って、登記の中に法定相続人のBの権利が含まれています。このため、Aの権利は消滅する(法定相続分を超える権利を対向できない)という判決がでる可能性の方が高いと思います。Aとしては、自分の権利と違う登記がされているのを見つけたら、どの場合でも、すぐに仮処分をして自分の権利を守るべきです。 (▲本文へ戻る

(*3) 改正法の規定は、遺言によって法定相続分を超える財産を取得した場合だけでなく、遺産分割協議によって法定相続分を超える財産を取得した場合にも適用されます(遺産分割の場合は改正以前からこのような扱いでした。この点については「相続コラム」の「相続人の債権者による相続財産の差押え」をご覧ください)。遺産分割で法定相続分を超える債権を取得した場合には債務者への通知が必要になりますが、この通知については2019年7月1日より前に相続開始したものでも、遺産分割の成立がその日以降の場合には通知が必要になります。遺言で債権を相続する場合は、関係ありません。 (▲本文へ戻る

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3.どうしたら本来の登記にできるか

(1) 協力してくれなければ裁判

 2019年7月1日以降に相続開始の場合は、遺言と違う登記があると、法定相続分を超える権利を失う可能性があります。
 また、それ以前に相続開始の場合には、法律上、遺言書で取得した権利を失わないと言っても、遺言書を法務局に持って行くだけでは、法務局では遺言書に基づいた登記をしてくれません。法務局が遺言書に基づいて登記してくれるのは、遺言をした人(亡くなった人)の名義のままになっている場合だけです。

  AとBの共有の登記がされている場合には更正登記(AとBの共有の登記をAの単独登記に改める登記)、Bの単独登記の場合には、亡くなった人からBに対する移転登記の抹消登記をして、それから、遺言書に基づいてAへの移転登記をする必要があります。

このうち、Bが相続の登記(AとBとが相続分で共有している登記)をした場合には、Aは、遺言書(公正証書遺言か検認済の自筆遺言)を使って、単独で、Aの単独所有の登記に直す更正登記をすることができます(令和5年の法務省民事局長通達でこのような手続が認められました)。Bの債権者が代位で相続登記をした場合(→2.(1)(*1))も、まだ差し押さえの登記がされていなければ、同じ方法で更正登記ができます。(2024.6月補正)

 これに対して、亡くなった人からBへの移転登記がされている場合には、Bが抹消に協力してくれなければ、裁判をする必要があります。
 この裁判に勝訴して判決がでれば、今度は、登記手続の必要があります。ただし、この登記手続は、判決書だけでできます(判決には「Bは・・・の登記手続をせよ」と書いてありますが、実際にBに登記手続をさせるわけではありません)。Bの単独登記がされた場合には、Bの登記を判決書で抹消してから、遺言書でAに対する移転登記をすることになります(同時に申請できます)。

 ただし、裁判をやる場合は、Bを裁判所に呼び出すことになるので、裁判を起こしたことがBに知られてしまいます。また、それなりに時間もかかるので(事案によっては比較的早く終わるかも知れませんが)、Bが第三者に登記名義を移転させる可能性があります。Bが悪意で登記をした場合には要注意です。2019年6月30日以前の相続の場合には、登記名義が移転しても、Aの権利は消滅しませんが、登記名義が転々と移転するとそれらの名義人を相手に裁判をすることになって、切りがありません。2019年7月1日以降に相続開始の場合には、第三者に登記名義が移ると、Aは法定相続分を超える部分の権利を失うことになります。

 そこで、仮処分が必要になります。

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(2) 仮処分

  (1)でお話したように、登記名義人が転々と移転したり、法定相続分を超える権利が消滅しないように、Aは、Bの登記を凍結する仮処分の申立を裁判所にすることになります。

 仮処分と言っても、色々な種類がありますが、ここで必要な仮処分は、Bに対して、所有権や持分権の移転や担保権の設定などの処分を禁止する仮処分です。これを「処分禁止の仮処分」といいます。

 この種の仮処分も裁判ですが、仮処分の申立をしたことをBに知られてしまうと、第三者に名義を移転してしまう可能性があります。そこで、裁判所は、Bには知らせず、Aが出した証拠や、Aから話を聞くだけで(通常はAの代理人弁護士が代わりに話をします)仮処分の決定をします (そのため、Aは十分な証拠を出す必要があります)。

 この場合、あくまでも、「仮」の決定なので、保証金が必要になります。不動産の場合はその価格(固定資産評価額)の15%~20%ほどのお金を法務局に供託する必要があります(金額は裁判官が決めます)
  供託したお金は、本裁判でAが勝訴すれば全額戻ってきます。敗訴した場合でも、多くの場合は戻ってきます。

 仮処分の決定が出ると、裁判所から法務局に「処分禁止の仮処分の登記」の申請がされます(自分で登記手続をする必要はありません。しかし、登記するので、登録免許税が必要になります)。決定の翌日には、法務局に通知されて、仮処分の登記がされます。
 仮処分の後で、Bが移転登記の申請をしたり、Bの債権者が差押えをしても、Aが裁判に勝って、その判決に基づいて、更生の登記や、移転登記の抹消登記の申請をすると、仮処分の登記の後にされた登記は抹消されます(なかったことになります)。(*1)

 つまり、処分禁止の仮処分によって、B名義のまま、登記を凍結させることになります。そして、この後で、本裁判を起こすことになります。
 

(*1)仮処分決定は「債務者(B)は、○○不動産の持分2分の1について、譲渡並びに質権、抵当権及び賃借権の設定その他一切の処分をしてはならない。」という形ででますが、B自身がする処分だけでなく、Bの債権者がする差押えや仮差押えの登記も、勝訴判決が出ると抹消されます。(▲本文へ戻る

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4. 相続人の債権者の差し押さえがもっとも危険です

 遺言と違う登記をされたという話とはちょっと違いますが、法律が改正されたことでより問題なのは、Bの債権者の差押えです。
 Bの債権者は、Bに支払い能力がなければ、Bの親が亡くなりBが相続するのを待っている可能性があります。そして、親が亡くなるとすぐに手続を執る可能性があります。
 Bの債権者は、Bの親が亡くなり、まだ、登記が親の名義のままでも、Bに代わって、親の名義からAとBの共有の登記(相続登記)をすることができます。そして、判決や公正証書に基づいてBの持分を差し押さえたり、判決がなくても仮差押えをすることができます(相続人の債権者による差し押さえについては、「相続人の債権者による相続財産の差押え」をご覧ください)。

 これをされると、Aが遺言で不動産の全部の権利を取得することになっていたとしても、Aは法定相続分(1/2)を越える権利をBの債権者に取られてしまます(正確には持分の競売手続が行われます。Aが競売で買い取ることもできますが、本来は遺言でもらえるはずだった権利をお金で買うことになります。この場合、Bの債権者に配当されるのは債権額の範囲内で、それを越える分はBに戻されます。しかし、Aが買い取れないと第三者との共有になり、やっかいな問題が起こります)。(*1)

 この場合の1番の対応は、当たり前の話ですが、 公正証書遺言で親が亡くなったらすぐに登記できるようにしておくことです。つまり、すぐに登記してもらえないような変な遺言書や検認が必要な自筆遺言は避けることです。親が亡くなってからでは遅いので、亡くなる前から、親に言って対応してもらい、亡くなった後、公正証書がすぐに使えるようにしておくことです。また、Aは、公正証書の正本を親から預かっておくべきです。

 なお、理屈の上では、対抗手段として死因贈与契約と仮登記の活用も考えられます(遺言書では仮登記は使えません)。
 死因贈与契約をすると贈与対象の不動産に仮登記をすることができます。死因贈与契約を結んで仮登記をしても、贈与をする人が亡くなる前なら、贈与する人は取消の意思表示や生前行為で、死因贈与契約を一方的に撤回できます。仮登記をしたからと言って、死因贈与を受ける人の権利が守られるわけではありません。つまり、仮登記しても意味がありません(例外的に死因贈与の撤回ができない場合もあるので無意味とまでは言えませんが)。
 しかし、亡くなると死因贈与の効果が発生します。相続の1人(死因贈与の受遺者以外の人)の債権者が、仮差押えや差し押さえをしても、 仮登記が優先することになります。これの問題点は、税金が多くなることや手間がかかることと、遺言書ではできないことです。やるとしたら、相当例外的な場合です。

(*1) Aが競売手続で買い取ることができず、第三者が買い取った場合には、不動産は、Aと第三者との共有になります。通常、親が遺言でAに取得させようとした財産ですから、Aが居住しているなどしているのが通常かと思います。持分を競売で買い取った第三者は、共有持分の買取を専門にしている業者の場合が多く、Aに対して、競落した持分を買い取るか、Aの持分を売るように求めます。何の接点もなかった第三者ですから、交渉での解決は難しく、また、時間が経てば、Aに対する不当利得(Aが単独で使用している場合)の問題も起こるので、Aとしては、速やかに共有物分割の裁判を起こすべきです。この裁判については、「共有物の分割の基礎知識」をご覧ください。(▲本文に戻る

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弁護士・内藤寿彦(東京弁護士会所属)
内藤寿彦法律事務所  東京都港区虎ノ門4-12-13白井ビル4階 03-3459-6391