共有物の分割の基礎知識
共有関係は、合意で成立することが多いです。しかし、時間の経過による人間関係の変化などで、共有関係を解消しようと言う話になります。
話し合いで共有物の分割をする場合もありますが、話し合いがまとまらなければ、裁判所に対して、共有物の分割を求める訴えを起こすことになります。その場合のルールなどについて、弁護士が解説します。
なお、ここでは、一般の共有物分割の裁判を取り扱っています。夫婦間の共有財産の精算(離婚に伴う精算)は扱っていません。
【目次】
1.裁判による共有物分割の方法
(1) 全ての共有者が原告か被告になる必要があります
(2) 裁判での共有物の分割方法は3つだけです
ア.3つの分割方法
イ.順序があります
(3) 全面的価格賠償分割(賠償分割)の要件
ア.一般的な要件と相当性の要件
イ.居住している場合
ウ.賃貸物件の管理
エ.競売分割になる場合
(4) 鑑定費用の負担
2.一部分割
3.全面的賠償分割(賠償分割)後の移転登記と引渡
4.共有者の利用利益の精算
5.関係記事
1.裁判による共有物分割の方法
(1) 全ての共有者が原告か被告になる必要があります
共有のパターンは、それこそ無数にあります。共有者の数もそれぞれの事案ごとに違います。
しかし、共通する原則の1つは、裁判で共有物の分割をするためには、全ての共有者が原告か被告になる必要があることです。
共有者が多数いる場合、仲の良い共有者もいれば、そうでない共有者もいます。話し合いでも、一部の共有者とは同じ意見になったのに、その他の共有者が反対して話しがまとまらないことがあります。
しかし、裁判を起こすためには、共有者全員が、原告か被告になる必要があります。
その理由は、全ての共有者が裁判の当事者にならないと、共有者ごとに判決の効力が及んだり、及ばなかったりして、解決にならないからだと説明されています。
共有者が非常に大勢いて、中には行方不明者がいたり、認知能力が著しく落ちている人がいるような場合にはややこしいことになりますが、それでも時間がかかるだけで分割ができないわけではありません。
一部の共有者とは同じ意見になったのに、他の共有者が反対して話しがまとまらないような場合には、同じ意見の共有者どおしが原告(共同原告)になり、反対意見の共有者を被告にします。意見が同じだけれども、裁判はやりたくない、という共有者がいる場合には、説得して共同原告になってもらいます。しかし、裁判は嫌だから原告になりたくないという人もいます。その場合は、その人も被告にするしかありません(被告は利害が対立している必要はありません。原告にならないなら、被告にするだけです)。
(2) 裁判での共有物の分割方法は3つだけです
ア.3つの分割方法
裁判所の判決では、任意売却を命じる判決はできません。共有物の分割方法は、次の3つです。これと後でお話しする一部分割を組み合わせることができます。
①現物分割
共有物を物理的に分ける方法です。例えば、住宅地に広い土地があり、これを共有者ごとに分ける方法です(住宅地に限りませんが)。(*1)
②全面的価格賠償分割(賠償分割)
言葉は難しいですが、簡単に言えば、相手方の共有持分を適正価格で買い取って、それで共有関係を解消するという方法です。遺産分割の代償分割と同じです。通常の売買と違うのは裁判所が買取価格を決めることです。
③競売による分割
共有物全体を競売にかけて、競売による売上金を、共有者に持分に応じて分配するという方法の分割です。なお、共有物分割の訴えを起こす裁判所は、競売で売上金を分けるという判決をするだけです。競売の手続は、判決をもらった共有者(原告でも被告でも)が、改めて裁判所に競売開始の申立をすることになります。
(*1)現物分割は、分割された現物の価格が、共有者の共有持分の価格相当になる必要があります(差がでる場合には、その差額相当のお金を払うことで調整します)。これは単に面積だけの問題ではありません。例えば、共有者が2名の場合で土地を分割する場合には、分割後の土地がどちらも公道に2m以上接していて、建物が建てられる土地でないと、分割後の土地の価格が共有持分相当の価値があるとは言えません。そもそも1軒の家しか建てられない場合には、現物分割そのものが認められません(宅地の場合です)。
現物分割は、土地(共有物)を分けて裁判は終わりです。1軒しか建てられないから、アパートを建てて賃料を分けようとか、区分所有建物を建てようというのは、判決ではできません。(▲本文に戻る)
イ.順序があります
判決による分割は、先にお話しした、3つありますが裁判所がどれを選ぶのか、法律上、順序があります。
法律には①の現物分割と、②の全面的価格賠償分割(賠償分割)が優先され、そのどちらもダメな場合に、③の競売による分割になる、と書いてあります(令和3年の民法改正法です。2023年4月から施行されています。共有関係の成立がいつかに関係なく、全ての共有物の分割に適用されます)。
実際の裁判所の取扱では、まず、②の全面的価格賠償分割(賠償分割)を当事者(原告か被告)が希望している場合、それについて、特に問題がなく、相手の共有持分を買い取るのに適正な価格を支払う能力があれば、現物分割ができるかどうかに関係なく、②による分割になります。
そして、②も①もダメな場合に、③の競売による分割になります。
(3) 全面的価格賠償分割(賠償分割)の要件
ア.一般的な要件と相当性の要件
①まず、全面的価格賠償で、相手方の共有持分を買い取ることを希望する共有者がいることです。
②次に、買取価格が適正に決まることです。基本的には、裁判所が鑑定人(不動産鑑定士の中から選びます)を選任し、鑑定人が共有物全体の価格を評価します。全体の価格が分かれば、持分割合に応じて、買い取る共有持分の価格が決まります(共有者以外の第三者に売却する価格を算定するのではないので、共有持分だけの評価はしません)。
③買取を希望している共有者は、銀行の残高証明を提出するなどして、自分が相手方の共有持分を買い取るだけの資金力があることを証明します。
これが要件になりますが、買取希望者が複数いる場合(例えば、2人で共有している場合に2人とも買取を希望している場合)には、さらに別の要件が必要になります。
それは、どちらが買受人として相当か、という要件です(相当性の要件などと呼ばれます)。
イ.居住している場合
原則から言えば、利用者が優先されます。
例えば、AとBの2人が1/2の持分で共有している土地があり、その上にAが建物を建てて住んでいる場合には、原則としてAに相当性があります。(*1)
共有土地の上にAとBの共有建物があって、そこにAが住んでいる場合にも、Aに相当性があると判断されることが多いと思います。ただし、建物の持分割合や、Aがそこに住む経緯、居住の状況によっては、Bに相当性が認められる場合もあります。
なお、AがBの持分を買い取ることが認められるのは、上記の②と③の要件、つまり、Aに適正価格で買い取るだけの資金がなければなりません。(*2)
(*1) 共有土地の上にA所有の建物がある、と言っても、様々なパターンや事情があり得ます。AがBの了解を得て自分の所有の建物を建てて居住している場合には、Aに相当性があると言えます。また、AがBとの遺産分割でAの単独所有の建物にした場合も同様です。しかし、AがBに無断で所有建物を建てて、Bの土地使用を妨げている場合など、様々な場合があり得ます。場合によっては、Aに相当性が認められないこともあり得ます。(▲本文に戻る)
(*2) 共有土地の上にA所有の建物があり、Aが居住している場合でも、AがBの共有持分を買い取る資力がない場合もあります。この場合、Bが取得を希望しなければ賠償分割はできません。共有土地上にAの建物の他、広い空き地があって、現物分割が可能な場合は現物分割が選択されますが、空き地がなければ、競売で分割するしかありません。競売になった場合、競落人は、Aに対して、建物を取り壊して土地を明け渡すよう請求できます。Aは立退料等の要求はできません。Aの経済的な損失は、土地が競売で売れてAの持分相当について配当(正確には剰余金の支払いと言います)を受けることで補償されたとみなされます。それではあまりにもAに酷な場合、共有物の分割請求自体が、権利濫用で否定されることもありますが、希なケースです。(▲本文に戻る)
ウ.賃貸物件の管理
建物を第三者に賃貸している場合もあり得ます。この場合、共有土地上の建物が、Aの単独所有の場合には、Aに相当性が認められる可能性が高いです。
それに対し、建物がAとBの共有の場合は、難しい話になります。第三者から受領する賃料をAがBに分配しないで、Aだけで受領して使っている場合には、Aに相当性があると言うのは難しくなります。しかし、それではBに相当性があるかと言えば、何とも言えません(当該事案のその他の事情が考慮されます)。
また、AとBで賃料を持分相当額で分けていたとしても、賃借人の募集などを不動産仲介業者に依頼したり、日常的な修繕を業者に依頼するのがAの場合(修繕費用はAとBで折半しているとします)、Aに相当性が認められる可能性が高くなりますが、当該事案のその他の事情(Bの事情を含めて)も考慮した上で判断されます。
それに対して、Aが多額の修繕費用などを出して、Bが出していないような場合には、Aに相当性がある場合が多いと思います。
相当性の判断は、裁判官がします。Aが直接利用しないで、賃貸物件の管理をだけをしている場合にAが全体を取得することになっても、Bには共有持分相当額の代金が支払われます。そのため、理屈の上では、Bの権利は守られることになります。その結果、Aに相当性を認めても問題はない、とされることが多いのではないかと思います(その他の要素も事案ごとに違うので、一概には言えません)。
なお、不動産鑑定士が中立的な立場で不動産価格を評価した場合でも、評価額は、不動産鑑定士によってまちまちなのが実態です。しかし、裁判所は、鑑定人の評価は間違いがないという建前です(そうでないと、解決しませんから)。
エ.競売分割になる場合
AとBの双方の事情を考慮しても、どちらの方が相当とも言えない場合(双方ともに資金力があったとしても)、競売が選択されることになります。(*1) (*2) (*3)
なお、ここでお話ししている、裁判による分割方法は、令和3年の民法改正によるもので、2023年4月から施行されました。この改正法は、施行後に訴えが提起された場合だけでなく、施行日時点で、裁判が係属している場合にも適用されました。
(*1) 平成12年(2000年)ころの判決の中には、競売だと安くしか売れないので、できるだけ競売による分割は避けるべきと明言している判決もありました。当時の競売では実際にそうだったと思います。しかし、現在、東京などの大都市圏では、概ね実勢価格に近い値段で競落されていると言われています。令和3年の改正法で、現物分割も賠償分割もできない場合に競売分割にするという条文になりましたが、これも法律が競売分割を避けているという意味ではありません。(▲本文に戻る)
(*2) 福岡高裁令和 6年 7月16日判決は、「原告、被告はいずれも賠償分割を希望し、また、いずれも相応の支払能力を有するから、賠償分割は可能である。(略)したがって、本件共有物の分割は、賠償分割の方法によるべきであり、競売分割の方法によることはできない。」としました。条文では、現物分割も賠償分割もできない場合に競売による分割とするとしています。つまり条文によると、双方が賠償分割による取得を希望する場合、資力要件の他に、相当性も検討して、どちらか一方に取得させるのが相当と言えない場合に、競売分割になります。ところが、高裁判決では、相当性の要件の検討をしないで、資力要件だけで、競売による分割を否定し、その後で、どちらに取得させるのが相当か、という判断をしています。先に競売による分割を否定したため、相当性についてかなり無理な判断をしています。これは条文に反した解釈と言えます。なお、この一審判決は、相当性の関係で、共有者のいずれが優れているとは言えないので、賠償分割によることができないとして、競売による分割が相当だとしました。(▲本文に戻る)
(*3) 賠償分割によって一方の共有者が他方の共有者に支払う買取代額は、鑑定の結果によります。鑑定の結果よりも高い代金を支払うので自分が買い取ると言っても、判決で相当性を決める要素にはなりません。和解なら可能ですが、あくまでも相手方が同意することが必要です。相手方が「ならば自分はそれよりも高い代金を支払う」と言い出すと、収拾が付かなくなります。それなら競売にして、競売の手続(期間入札)で、相手方よりも高い金額で入札して決めた方が公平です(あくまでも相当性に差がない場合です)。無論、競売ですから、第三者がより高い金額で入札して買い受ける場合もあり得ますが、自分が入札書に書いた金額より高い金額が手に入るので経済的には文句はないはずです。(▲本文に戻る)
(4) 鑑定費用の負担
全面的価格賠償による分割(賠償分割)が選択される場合、上記のとおり、共有物の価格評価をします。評価は、裁判所が選任した鑑定人によって行われます。鑑定人は、不動産鑑定士の中から選任されます。このため、鑑定人に対して、鑑定人報酬を支払う必要があります。
鑑定人報酬は、当事者の負担になります。原則として、鑑定の申立をした当事者が、全額を裁判所に予納します(判決のときに精算します)。
金額は、裁判所のルールで決まっているのではなく、鑑定人になる不動産鑑定士が、自分の報酬基準に基づいて裁判所に金額を通知します。そのため、鑑定人によって金額が異なります(極端に違わないとは思いますが、「裁判だから通常鑑定額の1.5倍」などという鑑定人もいます。以前は鑑定後に尋問が行われるのが通常だったのでその時の名残だと思います)。値切ることはできないので、その金額で、鑑定を申し立てた当事者が裁判所に収めます(これを予納と言います)。
この予納金は、最終的には(判決の時)、敗訴者の負担になるのが原則です。しかし、共有物の分割の裁判では、どの方法が選択される場合も、建前上は、勝訴、敗訴はなく、適正な分割が行われたことになります。そのため、持分割合で分けるのが普通です。例えば、持分1/2ずつなら、判決で、申立をしなかった当事者(予納をしなかった当事者)に対して、予納金の1/2相当額のお金を負担させることにします。裁判所が取り立てをしてくれるわけではないので、実際には、判決後に、予納をした当事者が相手方に請求して、支払われることになります。(*1)
(*1) 遺産分割の調停のときにも、遺産の評価について争いがあると鑑定が行われます。遺産分割調停では、法定相続分に応じて、鑑定の前にそれぞれの相続人が、予納金を納付します。なお、不動産関係で特殊なのは、借地非訟の場合で、この場合も、承諾料などの鑑定が行われます。鑑定をするのは鑑定委員(委員の中に不動産鑑定士がいます)ですが、借地非訟の鑑定は、国庫負担になっているため、当事者には鑑定費用の負担はありません。
2.一部分割
例えば、A、B、Cの3名の共有者がいて、AとBは任意売却をしようとしているが、共有者全員が売主にならないと適正な価格では売れません。ところが、Cが2名と仲が悪いので、話が進まない場合があります。そのような場合に利用できるのが、一部分割です。
一部分割というのは、
①共有物の一部だけを現物分割して、残りを共有のまま残す方法
②共有者が3名いて、2名が共有関係を残すことを希望している場合、残りの1名の共有持分を買い取る分割方法
です。(*1)
残りを共有のまま残すと言っても、あくまで、その裁判の中だけのことです。例えば、A、B、C3名の共有で、任意売却を希望しているが、Cと一緒では任意売却できない場合(AとBの2人は協力できるが、Cと感情的に対立しているため、AとBが納得できる買い手がいてもCの同意が得られないので売却できないような場合)、判決でAかBがCの持分を買い取って、AとBの共有とします。その後で、AとBとで買主を探して、任意売却することが可能になります。
なお、AとBのうち、買取をしない方は、裁判の当事者になる意味がないように見えますが、先にお話したように、裁判では、共有者全員が原告か被告になる必要があります。
無論、任意売却狙いだけでなく、AとBとで共有して不動産を有効利用することもあり得ます。
(*1) まず、①の方法による一部分割が最高裁平成4年1月24日判決で認められ、その後、全面的価格賠償分割(賠償分割)が最高裁判決で認められると、②の方法による分割も、東京地裁令和 5年 2月 7日判決、東京地裁令和 4年 2月17日判決などで認められるようになりました。(▲本文に戻る)
3.全面的賠償分割(賠償分割)後の移転登記と引渡
全面的価格賠償分割が認められる場合、裁判所は、和解を勧めたり、判決を書きます。
和解の場合も、判決の場合も、分割の判決や和解によって、特定の者が共有物全体の所有になること、共有持分を売る当事者は、代金と引き換えに、移転登記と引渡をすると書かれます。
このうち、移転登記(持分の移転登記)は、代金の納付を証明すると、判決や和解調書だけで、登記の申請ができます。移転登記の申請は、共同申請が原則ですが、判決による登記申請は権利者が単独できます。そのため、登記申請に必要な書類(登記識別情報や権利証などや司法書士への委任状など)の授受は必要ありません。
引渡は、どういう共有物で、持分を売却する共有者の占有状況によって違いがあります。Aに土地の共有持分があり、土地の上にはA所有の建物しかないような場合で、Bの持分をAが買い取る場合(つまり、Bが全く土地を利用していなかった場合)には、そもそも引渡自体が必要ありません。
4.共有者の利用利益の精算
(1) 不当利得の返還
共有物の分割の伴って、それまでの共有物の利用についての利益の精算を求める場合があります。
A、B共有の場合に、Aだけが共有物を利用していて、Bは共有物を利用していなかった場合、BがAに不当利得の返還を求める場合があります。
共有者は、持分に応じて共有物の全部を利用する権利があります。そのため、共有物の利用が妨げられたBは、共有物の全部を利用していたAに対して、その利得を不当利得の返還請求権に基づいて、返還を求めることができます。ただし、次にお話するように例外があります。
(2) 使用について合意がある場合
遺産分割を契機に共有が始まった場合、遺産分割協議の段階で、共有物の利用方法について合意をするのが通常です。例えば、父親が単独で所有していた土地建物が、父親が亡くなって相続して遺産分割する場合、母親のAに居住場所を残すために共有者にして、その子のBは形式的に共有者になる、というのは珍しくありません。
この場合は、遺産分割時の上記合意は、Aに対して、使用貸借を認めたことになります。つまり、Aの利得は、遺産分割時のAとBの合意の結果だったことになります。そのためのAとBの間には不当利得の問題は起こりません。
(3) 不当利得が問題になる場合の処理
不当利得の問題が起こるのは、上記のような合意がない場合です。例えば、父親の単独所有だった土地建物が、父親が亡くなった後で、その子のBの債権者がBに代わって、法定相続分の登記をして、Bの持分だけを差押えて、競売になり、Cが競落したとします。このような場合に、父親の配偶者のAは1/2の法定相続分があるので共有者になります。また、父親と同居していたので、父親が亡くなった後は1人で居住していたとします。
この場合には、AとCとの間には契約関係がないので、Aが1人で居住していることは、Cに対する関係では、不当利得になります(家賃相当分の利得をAが1人で独占していることになります)。
このため、CはAに対して、共有物の分割とともに、競売で共有持分権を取得したときから、Aに対する不当利得の返還請求ができます。Cの持分が1/4だとすると、家賃相当額の1/4の請求ができます。
ただし、物件が分譲マンションだとすると、Aは夫が亡くなった後で、固定資産税を払い、また、マンションの管理費や修繕積立金の支払いをしています。Cは持分権者なので、これらの1/4を支払わなければなりません。そのため、前記の家賃分の1/4からAは、固定資産税、管理費等の1/4を差し引いたものをCに支払えば足ります。なお、Cは物件を使用していないので、家賃相当の不当利得の返還を請求しなければ、固定資産税等の費用の負担を求められることはありません。
5.関連記事
●遺産分割前の共有と通常の共有が競合している場合(共有物の分割をしようとしたら、共有者の1人が亡くなり、その持分について遺産共有が生じた場合や、遺産分割前の共有持分が第三者に譲渡された場合)については、相続の相談の「通常共有と遺産共有が併存する場合の分割手続」をご覧ください(ページが飛ぶので、このページに戻り場合には、ページの左上の「←」をクリックしてください)。
●賃借権による借地権の準共有の分割については、借地の相談の「共有借地の分割」をご覧ください。
(この記事は、2024年12月に書きました。)
弁護士 内藤寿彦 (東京弁護士会所属)
内藤寿彦法律事務所 東京都港区虎ノ門5-12-13白井ビル4階 (電話 03-3459-6391)