【目次】
1.法定更新後も期間の合意はできます
2.更新後の期間の始まりはいつから?
3.法律よりも短い期間の合意は無効です

1.法定更新後も期間の合意はできます

 法定更新の場合や、契約の期間満了前に更新の合意をしていた場合、更新後の契約期間は、更新の時(前の期間の満了の翌日)から始まります。

 ところが、借地の期間の満了前から更新の条件について話合いをしていたのに、期間満了までに話し合いが成立しないことがあります。この場合に引き続き、更新の条件について話し合いを進め、期間満了から半年くらい過ぎてから更新の合意をしたとします。この場合、一旦、法定更新が成立していますが、法定更新の成立後でも、当事者双方が合意して期間の合意をするのですから、合意そのものは有効です。
 一旦合意して期間を決めた場合でも、当事者双方が合意すれば、変更することも可能です。なお、更新後半年過ぎた場合を例にしましたが、更新後の期間中なら何年過ぎても双方が合意すれば、有効です(*1)。

(*1) 期間満了までに更新の合意をしないと、更新できないのではないかと心配する借地権者がいますが、そのようなことはありません。逆に、期間満了までに更新の合意が成立しないと法定更新が成立して、もう更新の条件の話し合いができないのではないかと心配する地主の方もいます。しかし、期間満了後に更新の条件について話し合いをすることは何の問題もありません。それで合意が成立すれば、それはそれで有効です。また、期間満了前から話し合いをしていた場合を例にしましたが、期間満了前に何の話し合いもしないで期間満了になり、その後で更新の条件について話し合い、合意することもかまいません。ただし、話し合いをするように相手に強制することはできません。

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2.更新後の期間の始まりはいつから?

 法定更新した後に期間の合意をした場合、いつから更新後の期間が始まるんだと疑問を感じるのではないでしょうか。

 正解は、期間満了後に更新の合意が成立したとしても、期間満了時に更新し、その時から更新後の期間が始まることになります(午後12時に期間満了して午前0時に更新後の期間が始まるという意味です。簡単に言うと、満了日の翌日から更新後の期間が始まります)。
 そのため、合意更新の契約書の日付けを遡らせて、日付けを期間満了の翌日にして、その日から20年としたり(木造などの非堅固建物を前提として説明します。堅固建物は期間30年と読み替えてください)、日付けは合意の成立した日とした上で、期間満了の翌日から20年とする場合があります。どちらも有効です。

 また、更新の合意が成立した日から20年の期間にするとしても、問題はありません。この場合は、前の借地契約の期間満了の日の翌日から20年の法定更新が始まりますが、その半年後に合意でその日から20年の期間を定めたことになります。つまり、契約の期間満了日の翌日から、20年6か月の期間の合意更新をしたことになります。ただし、20年6か月が経過した後で、法定更新する場合には、その後の期間は20年になります。(*1)

(*1) 更新ではなく、借地権の譲渡があった場合、借地権の譲受人(買主など)と地主の間で、改めて契約書を作成することがあります(作成しなくても、前の借地権者との契約のとおりの内容の契約が続くことになります)。
 この場合、特に期間について合意がなければ、前の借地権者との間で定めた期間のままになります。前の契約で20年と定めてあって10年が経過していれば残りの10年が期間になります。
 ところが、中には、改めて契約書を作成した日から20年と定める場合もあります。一見すると譲受人と地主との間で新規に借地契約を締結したように見えますが、実際には、古い借地権が続いています。つまり、この場合、期間の途中で当事者で合意して期間を延ばしたことになります。前の借地権者との期間が残り10年だった場合(10年が経過していた場合)には、期間30年の合意をしたことになります。この場合も次の更新が法定更新なら20年に戻ります。

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3.法律よりも短い期間の合意は無効です

 法定更新が成立した後で、更新の条件について合意することは何の問題もありません。しかし、法定更新の日(前の借地契約の期間満了日の翌日)から20年よりも短い期間を定めても、無効です

 実際にあった話ですが、法定更新後、4年してから10年の期間の更新合意をした例がありました。この合意によると、法定更新の日から14年の期間の合意をしたことになります。つまり、前の契約の期間満了の日の翌日から20年よりも短い期間の合意をしたことになります。このため、その合意(期間の部分だけですが)は無効になります。期間は、この合意前と同じで、更新の日(期間満了)から20年の契約になります(合意で20年以上の期間を定めたわけではないので、期間の途中で建物が朽廃すれば、契約は終了します)。

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弁護士 内藤寿彦(東京弁護士会所属)
内藤寿彦法律事務所 東京都港区虎ノ門5-12-13 白井ビル4階  電話 03-3459-6391